現実と目標、実態と理想を明確に区別することによって、正しい努力や創意工夫が生まれる。嘘は、努力や創意工夫の機会を奪ってしまう。嘘は、自己の弱さや甘えを表し、他者を侮辱するものである。
問題なのは、売上や原価を偽る行為、その結果としての利益を偽る行為である。1,000万円しか売上がないのに、1億円の売上を計上すること、仕入価格が50万円なのに100万円だと偽る行為である。少し観点を変えれば、アメリカ産の牛肉を国産の牛肉だと偽る行為、数個しか売れていないのに完売したのであとはキャンセル待ちだと製品の評価を歪める行為が問題になる。
嘘をつく行為は問題だが、事実を受けとめる側にも課題はあるだろう。例えば、株式を公開することに対する負担や不安をうったえる経営者は多い。突発的な市場の混乱時を除けば、市場は適切な情報開示に対して適切な価格設定をするものであり、そうあるべきものである。
組織内外からの重圧によって、経営者が嘘をつかなければならないように感じるのは経営者の弱さ、あるいは、説明責任を果たせない経営者の経営者としての力のなさの表れだろう。短期的な混乱は避けられないかも知れないが、市場や社会は適切な情報開示を適切に評価するものだと信じたい。
1980年代に、毒物が混入した鎮痛剤を全品回収するなど迅速な対応と情報開示によって消費者の信頼を回復したヘルスケア企業であるジョンソン&ジョンソンなどは良い例である。
嘘は嘘を積み重ねることにつながり、短期的な利益や体裁の良さをもたらすかも知れないが、中長期的には維持不能になるだろう。1%の可能性に望みを持つこと、より良くしよう・より良く見せようとする正しい努力や創意工夫に価値はあるが、事実とかけ離れた嘘はマイナスの価値を生む。
現実と目標、実態と理想を明確に区別することによって、正しい努力や創意工夫が生まれる。嘘は、努力や創意工夫の機会を奪ってしまう。嘘は、自己の弱さや甘えであり、他者を侮辱するものになる。
【V.スピリット No.13より】
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