直観: 人的高速シミュレーション

2008.05.13

ライフ・ソーシャル

直観: 人的高速シミュレーション

猪熊 篤史

直感は、有望な仮説となり、それを検証することによって、より適切な結論を得ることが出来る。一種のシミュレーション結果の価値は高いのではないか?

「直感」という言葉に対してどのようなイメージを持たれるだろうか?「根拠のない思いつき」、「思慮の浅さ」、「偏見」など悪いイメージでとらえられることも多いようだが、それこそ私の偏見だろうか?

直感の働きを信じるタイプの人と直感の働きを否定する人がいる。性格や生まれ育った環境や教育によって思考や価値観が異なる。

経営者の中には直感の働きを信じる人が多いようである。直感とは、自己の知識、経験、記憶の検索、あるいは、人の潜在意識や本能、モノゴトの性質との関連において導き出される高速シミュレーションの結果であると言えそうである。

直感が有効に機能するためには十分な情報、知識、経験も必要だろう。何をもって「十分」というのかは曖昧だが、直感を有効に働かせるために情報、知識、経験は多いにこしたことはないだろう。

直感とは、人の本能、「アニマルスピリット」と呼べるような動物(あるいは、生物)としての潜在的な能力の作用によってもたらされる感覚、思考、ひらめきであると言えそうである。勘違いや思い込みなど、直感的に導き出す解答は、必ずしも正しいものではない。しかし、記憶している情報、知識、経験のデータベースと直感的な思考を適合させることで、信頼性が高い思考を導きだすことはできるだろう。

このようなことを書くと超能力や超自然的な作用の信奉者ではないかと疑われるかも知れないが、もう少し直感ついて掘り下げて考えてみたい。

私が直感の働きを考えるきっかけになった原因の一つに、欧米のビジネススクールに入学するために受験したGMATという英語と数学の問題で構成される標準テストでの経験がある。短時間で、多くの問題に解答しなければならないテストである。高校レベルの国語(英語)と数学の知識で解答出来るのだが、時間のプレッシャーもあって難しい。テスト形式や根底にある規則性に慣れる必要があったが、迷った問題は不正解であることが多く、素早く解答を導き出せたものが正解であることが多かった。このような経験から潜在意識や本能的な思考によって意識することなく「正しい解答」を探し出す能力(脳力)あるのではないかと感じたことがある。

また、直感の働きを考えるようになった別の理由として、株式投資の経験もある。株式投資を始めたころは、いわゆる「逆張り」と言われる投資手法を使っていた。これは株価が下がったところ、あるいは、誰もが株価が下がると予想している中で株式を購入するという投資スタイルである。バブル経済崩壊直後で株価が低迷していた時期(それでも現在の日経平均株価よりは高水準だった)でもあり、逆バリの発想がなければ、株式を買えない時期だったのかも知れない。このころの私の投資成績は、決して良いものではなかった。

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