顧客の期待に応える

2008.05.10

仕事術

顧客の期待に応える

猪熊 篤史

他社に真似されることを心配するよりも、他社に真似の出来ないもの、あるいは、真似されても良いものを作るべきである。顧客のニーズに適合するものを作り、顧客の期待に応えることが大切である。

20年以上前の話だが、小学校の先生が「金融政策は、市場が予期しないような政策変更を、市場が予期しないようなタイミングでおこなった時(市場を驚かせるような場合)に効果がある」と話していたのを聞いて「そういうものなのか」と納得した記憶がある。

確かに、経済が計画的に運営されていた時代において私の先生は正しかったようだ。しかし、バブル経済とその崩壊、経済の長期低迷を経て、インターネットの普及などによって、情報が世界中で瞬時にやりとりされる今日、市場を驚かせるような秘密主義は時代遅れになりつつある。

もちろん秘密保持契約を結んで開示を受ける情報や顧客情報など秘密にしなければならない情報は多い。インターネット企業における顧客情報の流出などは厳重な対応が必要である。

顧客ニーズに適合して、顧客の期待に応えることが重要である。昔の金融政策のように市場(顧客)を驚かせるようなものは適切ではない。競合他社を驚かせるのは良いが、顧客、投資家、取引先、社会を驚かせるのは適切ではない。結局、競合他社を完全に驚かせることも不可能になる。

新製品の開発を極秘に進めて、ある日突然発売して、競合他社を出し抜くと共に、顧客も驚かせて市場シェアを獲得しようとしても上手くいかないだろう。相応のプロセスが必要である。

密かに開発を進めて、売り出した製品が売れないのは、技術者や経営者が自分本位の技術志向、視野の狭い技術の実現を目指すあまりに、顧客ニーズの把握や製品としてのソリューションの実現が疎かになってしまうからである。広い意味でのマーケティングが必要になる。

ベンチャーであれば、特定の顧客がないこともあって試行錯誤によって製品を開発していかざるをえないこともある。しかし、対象とするニーズの理解と製品としての具体化、さらには、適切な期待形成なしに、製品の普及は見込めない。顧客ニーズを理解して、顧客の期待に応え、理想的には顧客の期待を上回り、顧客の満足や喜びを高めたいところである。

競合他社に真似されることを心配するよりは、競合他社に真似できない製品、あるいは、真似されても良い製品を開発すべきである。市場に出せば、遅かれ早かれ競合他社は新製品を真似することが出来るようになる。製品技術が特許で守られていても、特許に守られていることに安住していては、中長期的な成功は望めない。

製品・サービス、あるいは事業内容を適切に説明すること、説明出来ることも大切である。様々な意見や利害がある中で、誰のどのようなニーズを満たすのかという判断も必要になる。製品について十分な理解を得られないのであれば、製品の開発や販売を中止すべきかも知れない。しかし、開発段階の市場調査はあてにならないことがある。最終的には判断によるが、需要が見込めないものは基本的には作るべきではない。

繰り返しになるが、他社に真似されることを心配するよりも、他社に真似の出来ないもの、あるいは、真似されても良いものを作るべきである。顧客のニーズに適合するものを作り、顧客の期待に応えることが大切である。その結果は素直に受け入れるべきである。

【V.スピリット No.9より】

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