これまで数々のピンチのときに、漫画の力に助けられたと語り、現在、日本のポップカルチャー・コンテンツを世界に広げるべく活躍中の保手濱彰人さん。著書『武器としての漫画思考』(PHP研究所)がベストセラーとなり、今後は漫画を活用した、人財育成にも注力すると語る保手濱彰人さんにお話しを伺いました。 聞き手:猪口真
また、人間はボラティリティ(変動性)を持つ存在です。たとえば、『賭博黙示録カイジ』(福本伸行・講談社)のカイジは、いわゆる社会不適合なダメ人間ですが、場面によっては決して諦めない強さを持っています。劇場版『チェーンソーマン
レゼ編』の主人公デンジとレゼも、そのときの関係性や状況によって、お互い惹かれ合うこともあれば殺し合うこともある。人間は多種多様で、状況次第で善にもなるし、悪にもなる。複雑で単純に割り切れないという人間の本質を、漫画は驚くほどの解像度で描いています。
猪口 ただし、複数の作品やシーンを横断して扱うとなると、それを一本につなぐストーリーやロジックが重要になりますね。
保手濱 テーマに沿って、各作品の場面やキャラクターを取り揃えてキュレーションすることで、最も効率良く学ぶことができます。たとえば、「カイジ」から逆境を乗り越える術を学ぶ場合、作品全体のボリュームを100とすると、その要素はせいぜい3程度です。複数の作品からそれぞれ、この3にあたる要素を切り取って集めれば、逆境を乗り越えることに特化した1冊の本ができあがります。僕の役割はそうした要素を見つけ出し、編集するキュレーターであることです。多種多様な作品、多種多様なシーンを知っているからこそ、その共通項を抽出することができるのです。
猪口 ひとつの作品に限定すると、対象者を選んでしまうことにもなりますよね。
保手濱 おっしゃる通りで、人によって好みやテイストの合う・合わないは必ずあります。一作品に特化して押し付けるのは違うと思うので、シーンを切り取って見せるというやり方にしています。作品全体のボリュームが100だとしたら、その人に深く刺さる要素は、その中の1だけかもしれません。だからといって、その1を得るためだけに100すべてを読まなければならないというのは酷な話なので、我々がキュレーターの役割を果たし、凝縮した「1」それぞれを集約したものを、提供していくということです。
猪口 プログラムにはインテグラル理論や成人発達理論の考え方も取り入れられています。
インサイトナウ編集長対談
2024.06.03
2026.02.09