少子化問題は突き詰めると「人手不足」「社会を支える資金負担者の不足」「需要不足」の三つに集約される。その根本的な解決には生産年齢人口を増やす以外になく、実質的な移民政策の転換に踏み切るしかないところまで事態は来ている。
少子化の意味する第二の大問題は、社会保険・税金の負担者が着実にかつ加速度的に減ることだ。第一の問題が「労働力面で社会を支える人が減る」ことなのに対し、この第二の問題は「資金面で社会を支える人が減る」ことだ。
日本の年金制度は「世代間の支え合い」で成り立っており、現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付する仕組みだ。しかし多数の高齢者が引退する一方で少数の若者しか支える側に回らない、大変な事態が加速しつつある。いわゆる「胴上げ」型から今や「騎馬戦」型に移行しつつあり、この先は「肩車」型になると指摘されている。
そして同様の問題が(年金以外にも)医療保険や税金にも出現することが明白である。一定の収入がある現役世代がこうした社会制度のコストを主に負担する構造はこの先も根本的に変わらないはずだ。このまま行くと、日本に生まれた若者は一人当たりの社会保険・税金の実質負担額が今の高齢者の数倍になってしまう。率直に言って、維持可能ではない。
この問題に関しては、(第一の問題への対処と同様に)女性や高齢者の労働市場参加率を高める、支えられる側の高齢者の負担割合を少しずつ増やす、といった策が漸進的に執られてきた。しかしこの弥縫策が少子化の流れを押し留める方向には機能しないことは明白で、しかも制度維持の効果についても限界が近づいていることも周知のとおりだ。
結局、生産年齢人口(15~64歳)を増やす以外にまともな解決法はないのだ。
3.第三の問題:需要の不足
最後に少子化が意味する第三の大問題は、社会全体の消費需要がどんどん縮小してしまうことだ。第一・第二の問題が供給面のボトルネックだとすると、この第三の問題は需要面のボトルネックだ。
高齢者は既にある程度のものを所有しており、活動も少しずつ減退するため、高齢者が主体である社会では年間消費額は伸びない。やはり生産年齢にある現役世代こそが消費の主役なのはいつの時代も変わらない。その主役の数が減るため、日本という市場が加速度的に小さくなっているのだ。
既に、目端の利く大企業の多くは随分と前から海外市場に注力し、投資も雇用も海外にシフトしてきた(海外の有力企業も日本市場を軽視する傾向が強くなっている)。この「個別最適」に走る企業行動が近年の日本市場での需要不足につながっている側面も強い。
一方で、就業者数の大多数を占める中小企業は日本市場に全面的に依存しているケースが多く、日本市場の縮小が競争激化と相まって彼らの収益減となり、それが従業員への給与が伸び悩んできた、あるいは悪い場合は倒産・廃業等につながってきた大きな要因になっている。さらにそれが日本市場での需要不足にもつながるという悪循環の構図が形成されてきたのである。いわゆる「人口オーナス」現象である。
社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/