マイナカードに関連するトラブルが頻発している。その多くは、きちんと事前に検証しておけばこんな大事にならなかったのに、と思われる問題ばかりだ。
マイナンバーカード(以下、マイナカード)の利用に関連するトラブルが連発し、オンライン記者会見やTV番組等で、河野太郎大臣がデジタル庁を代表して釈明や謝罪を繰り返す羽目になっている。
河野大臣の会見と幾つかの報道内容に基づき、どんな問題がなぜ起きているかを簡単に整理してみた(件数は6月12日時点で確認できているもの)。大きく分類して、1)コンビニ交付サービスでの誤交付、2)マイナ保険証の誤登録、3)公金受取口座の誤登録、4)マイナポイントの誤付与、5)マイナポータルでの他人の年金記録閲覧、の5つである。
1)コンビニ交付サービスでの誤交付
【不具合】コンビニでマイナカードを使って住民票の写しや戸籍証明書などを交付するサービスにおいて、別人の証明書が発行される(4自治体で14件)。
【原因】システムの不具合とされる。川崎市の事例では、同じ自治体の住民がほぼ同時に、それぞれマイナカードを使って戸籍証明書を申請したところ、後の人の処理が先の人の処理を上書きしてしまい、先に申請した人にも後から申請した人の証明書が発行されてしまったとのこと。
2)マイナ保険証の誤登録
【不具合】 マイナカードと保険証を紐づけ登録する際に、別の人の情報が登録された(現時点の公表分として全国で7,312件だが、新たな事例が追加されそう)。
【原因】健康保険を運営する組合などが、加入者の健康保険証とマイナカードを紐付ける際に入力を誤ったと考えられる。別人なら住所が異なるため本来なら誤りを見抜けるはずだったが、「あまりに申請の住所と住民票の登録住所の不一致エラーが多く生じるため、住所が一致しなくても生年月日などが同一なら同一人物とみなして作業を進めていた」などといった、マニュアルを逸脱した処理が常態化していた模様。
3)公金受取口座の誤登録
【不具合】他人の公金受取口座が誤ってマイナカードに紐付けられて登録された(748件)。
【原因】①自治体の窓口で直前に利用した人が画面をログアウトせず、次の人が手続きを行ったため。しかもマイナンバーには氏名のふりがなの登録がないことから、ふりがなが登録されている金融機関の口座とシステム上、照合ができないためにこの人為的なミスに気づかなかった。②確定申告の還付金の受取口座を登録する方法の際、国税庁において登録申請者を同姓同名の別人と取り違えたことにより誤登録された。
なお、(本人名義の口座でないとダメなのに)家族名義の口座が約13万件登録されていることも併せて判明したため、9月末までに本人名義の口座に登録し直すように呼び掛けがされている。こちらも本人名義の口座であるかの確認を取れないというシステム上の不備が指摘されている。
社会インフラ・制度
2023.02.01
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
