「理系」と呼ばれる分野の取材と執筆を得意ジャンルとするライター集団「パスカル」を率いる、インタビューのプロフェッショナル、竹林篤実さん。哲学科の出身ながら、文系・理系の枠を超えてライターとして幅広く活躍される竹林さんにお話しを伺いました。(聞き手:猪口真)
猪口 竹林さんは、理系ライターと言いながら、マーケティングの観点があるのが特徴です。「理系の書き手になるためにはマーケティングの勉強が必要」という発想が生まれたのは、広告会社でのプランニングの経験があったからでしょうか。
竹林 あるプロダクションで聞いた話ですが、極端な話、BtoBのオウンドメディアはアクセス数1でもいい、逆に、アクセス数をたくさん集めても意味がない。大事なのは、ピンポイントで刺さる記事をどれだけ作れるかであり、Googleのアルゴリズムで上位表示されるように組み立てを考える意識です。ピンポイントというのは、どのようなお客さんが何に困っているのかを、正確に突くわけです。まわりを見るとライターと理系を繋ぐ、理系とマーケティングを繋ぐ人ががいないと気づきました。
理系ライティングでは、まず理系の内容をわかっていなければなりません。サイエンスライターはたくさんいますが、マーケティングの視点があまりないようです。しかも理系の人たちがわかる伝え方、解説書を書くような伝え方はできても、理系ではない一般の読み手には、それではわからない。そこが盲点だと思ったのです。
猪口 そこをつなぐのが、理系ライター集団「チーム・パスカル」ですね。「チーム・パスカル」はどのように結成されたのですか。
竹林 「チーム・パスカル」は2011年に出立ち上げました。私の最初の本を出してくれた編集者と、その編集者が関わって本を出した人が京都にいて、3人で何かできないだろうかというのがスタートでした。
その頃、私は理系の研究者を数多く取材していました。ある大学広報の支援サイトでは、日本にいる10万人の教授、準教授のうち、約2万人を目標に取材して記事を載せています。そのコンセプトは高校1年生に読ませたい記事です。つまり文理選択をする前に、単に数学ができる/できないではなく、理系にはこんなに面白い研究している先生がいる実態を知ってほしい、世界をできるだけ広げてほしいという狙いで立ち上げられたサイトです。ところが、取材の半分は理系の先生なのに、ライターは文系出身なので、理系文系のミスマッチが起きてしまう。インタビュアーの知識があまりに不足しているために、先生の機嫌を損ねたりするわけです。それで、私が専属で取材するように頼まれて、理系の500〜600人分を担当させてもらって、理系ライティングの経験を積みました。
さらに、京都には、村田製作所、京セラ、島津製作所、ロームなど、BtoBメーカーがたくさんあります。そこにチャンスがあると考え、理系ライター集団「チーム・パスカル」を組んで、サイトを立ち上げました。ライターで理系は10人に1人ですが、なおかつマーケティングがわかるとなると1万人に1人、さらに理系の内容を文系に噛み砕いて説明できれば10万人に1人になると思いました。
次のページ「STP」を明確にし、顧客との信頼関係を築く
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
インサイトナウ編集長対談
2022.03.16
2022.08.12