ロシアのウクライナ侵攻が世界の非難を浴びている、このタイミングだからこそ日本は声高にロシアに要求すべきだ。「北方領土を返せ」と。その狙いは3つある。
つまりロシアが真剣に領土拡張より経済再建のほうが大事だと思い定め、かつ誠実に過去の暴虐行為を反省し、支援を求めてきた場合、日本という国は、北方領土の即時返還を条件として彼らの経済再建を真摯に支援することを約束してくれる、ホワイトナイト(白馬の騎士=窮地を救ってくれる恩人)になり得るのだ。
満州などでの残虐な行為やシベリアでの抑留・強制労働などの旧ソ連の非道を知っている日本人からは「何を身勝手な」という声も出ようが、少なくともロシア人にそういう潜在的期待を抱かせておくことは重要なのだ。さもないとロシアはより身近な欧州の国々にだけ助けを求めかねない。そうすると日本の出る幕は無くなってしまう。
北方領土を返還された上で、「再び強欲な欧米各国の餌食になりかねないロシアを救ってくれるホワイトナイト」として感謝される。そうした立場でなら日本国民の多くも溜飲が下がる思いを抱くことができ、「罪を悔いた大悪党」たるロシアへの支援を考える度量を持つことだろう。
北方領土問題の経緯を君は知っているか
ところで、そもそも日本人でさえ北方領土問題の経緯をきちんと理解している人は少ないかも知れない。
第二次世界大戦の終盤、敗戦の色が濃くなった旧大日本帝国は愚かにも、領土的野心を燃やすソ連に対し終戦交渉の仲介を依頼した。日本軍の窮状を認識したソ連は準備万端整えて、日ソ中立条約を一方的に破棄して火事場泥棒的に満州や南樺太に攻め入り、満州では武装解除した日本の関東軍と居留民間人を多く殺戮・略奪し、もしくはシベリアに送還し強制労働させた。
これだけでも十分な戦争犯罪だが、北海道北部の占拠を狙っていたスターリンは、日本がポツダム宣言に基づき敗戦を受け入れた後も千島と南樺太への侵攻作戦を発令した。その結果、占守島という千島列島最北端の島で日本軍の守備隊とソ連軍部隊は大激突する。
名将として名高い樋口季一郎・第五方面軍司令官はソ連の邪悪な意図を予想し配下の各部隊に警戒を怠らないよう指示し、ソ連軍の動きをいち早く察知し防御を指示した。隷下にあった第九十一師団に所属する現地守備隊は、多大な犠牲を出しながらもソ軍大部隊の侵攻を食い止め、大本営の命に基づき自ら武装解除するまでソ連の占拠を許さなかった(むしろ戦闘では優勢だったと伝えられている)。
この悲惨な戦闘のお陰でソ連の出足は食い止められ、一挙に北海道への上陸、そして占拠・分割といった悪夢は避けられた。ソ連軍の侵攻が遅れている間に、米軍が北海道に進駐したのだ。
その後もソ連軍は姑息なことに、武装解除した日本軍に抵抗される恐れがなく終戦後の連合軍が戦後処理の準備に入るまでの隙を狙って、択捉島、色丹島、国後島などを不法に占領したのである。
つまり北方領土は決して、プーチンが主張するような「第二次世界大戦に正式参戦したソ連軍が日本軍と戦って奪い取った名誉ある戦果」ではない。ソ連軍の行いは国際法を真っ向から否定した、火事場泥棒そのものだったのだ。社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/