ロシアのウクライナ侵攻が世界の非難を浴びている、このタイミングだからこそ日本は声高にロシアに要求すべきだ。「北方領土を返せ」と。その狙いは3つある。
そう、第二の意義は、極東地域のロシア軍を、泥沼化が予想されるウクライナ侵攻に移転させることを許さずに極東に張り付けさせることで、間接的にウクライナを支援できることだ。
平和国家・日本はいくらウクライナに同情していても武器供与などの直接的な軍事支援をする訳にはいかず、対ウクライナ支援としてできることは限られている。今最も期待されていることは資金援助であり、この先でも戦後復興に対する経済・技術的支援だ。
しかし既に述べたように、北方領土返還要求と日米軍事演習を平行して行うことで、ロシアの全軍備をウクライナ侵攻に集中させることを妨げる効果は大きく、それは十分にウクライナに反撃の余地をもたらす、極めて効果的な支援策たり得るのだ。
意義3.将来の北方領土返還交渉に向けた呼び掛けとなる
北方領土の返還をロシアに求めるだけで即、ロシアが返還交渉に応じると期待する能天気な御仁はいないだろう。しかし将来のいずれかの時点で、ロシアにまともな政治家が現れないとも断言できない。そしてまともな政治家であれば必ず、対外軍事強化ではなく、経済再建によって国民の生活を守ることを最優先にするはずだ。その時には日本が今発する北方領土返還要求のメッセージが呼び起こされるだろう。
そう、第三の意義は、経済再建を希求するに際し日本に支援を求めるなら真っ先に切るべきカードは北方領土の返還だと、今のうちからロシアの国民と政治家に印象づけることができることだ。
ロシアの政治情勢というものは外国からは容易に伺い知れない。プーチンはこの先も病気や老齢で引退するまで20年以上も政権を維持するかも知れないし、来週にでもクーデターが起きて失脚するかも知れない。しかし仮にプーチン政権が倒れてもすぐに民主的な政権に切り替わる可能性はかなり低く、西側が期待するような民主化は十数年後かも知れないし、数十年後かも知れない。
しかし、今回の国際的制裁を受けてロシア経済が大打撃を受けることは間違いない。そして長い間の低迷期を経て、何代か後に経済・経営感覚を持った政治家がロシアに現れて政権を奪った暁には、経済再興がロシアの主要テーマになるだろう。そのとき、有力な支援パートナー候補として浮上すべきは日本だ。
長い間NATOから脅威を受け続けた記憶(しかも歴史的に欧州の大国から何度も侵攻された記憶とダブっている)が肌感覚として強烈なのに加え、エリツィン時代に欧米の官民がロシアから富を奪っていった詐欺的なやり口に関してはロシア国内では繰り返し語られてきたはずで、欧米に対する不信感はそう簡単にぬぐえないはずだ。それに引き換え、我がニッポンは現代史においてそうした「悪行」からは無縁だ。
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/