昨夏のコロナ過の最中に行われ、大いなる議論を呼んだ東京オリンピック・パラリンピック。その招致時に企図された狙いの大半はコロナ過もあり脆くも崩れ去ったため、費用対効果の面では見るも無残な結果となった。それも含め、ごまかさずにきちんと総括すべきだ。
1)については日本選手の大活躍が続いたお陰で高く評価する向きもあろうが、そもそも無観客開催になっても国民の大半はTV観戦で大いに盛り上がったのだから、わざわざ地元開催でなくともよかったことになってしまう。2)についても、会場やパブリックビューまたはスポーツバーなどで観戦することでの市民間での盛り上がりは得られず、景気刺激効果が大きく棄損したのは間違いない。
とはいえこうした結果、すなわち「効果」が大きく棄損してしまったことに関しては関係者・責任者を責めることはできない。正直なところ、招致段階においてここまで世界的なパンデミックにぶち当たる可能性を予想できた者は皆無だったはずだ。これは大震災の被害同様に関係者にとっては制御不能な「天災」だったと言えよう(私見では中国政府の情報隠しによる「人災」だったとも思うが)。
とはいえ、海外からの観光客の訪日が期待できなくなった時点で「プランB」に切り替えるべきだったのに、政府も多くの企業も大した対策をできていなかったのは残念だ。開催が1年延期されたので対策準備期間は結構あったのだ。幾つかのあり得べきシナリオの一つとして「海外からの訪日ゼロ、しかも無観客観戦となった場合、どう対処すべきか」を検討しなかったとしたら、その企業はよほど「思考停止」状態が続いていたと言わざるを得ない。
具体的にはインターネットでの海外への訴求に思い切って重点を切り替えていく思い切りが、政府・企業側にもっとあってよかったのではと思える点は幾つもある。例えば、小生も関与した企業が世界にその素晴らしい技術力をアピールする機会を、国内での開催直前のオリンピックへの反発ムードに遠慮してあえて抑制したことは、かえすがえすも残念だ。こうした観点で検証すべき点は他にも多々あるだろう。
さて、こうなると唯一まともに残った「期待効果」は、インフラ整備によるその後の資産化、いわゆるレガシー効果くらいである。しかし単に施設をどんどん新設すればよいという「土建屋経済」的発想は今の成熟社会にはなじまない。この機会に整備した施設をいかにその後フル活用できるようにあらかじめ考えていたかが問われる。
この点では、元々東京オリパラでは「既存施設をうまく活用することでの資産効率化」といった概念があったので、ある程度は意識されていたはずである。しかし結論的にはかなり厳しい点数を付けざるを得ない。建設費の高騰で会場整備計画は何度も見直されたが、グランドデザインに欠けた、その場しのぎに終始したものが多かった。その象徴が国立競技場だ。
社会インフラ・制度
2021.07.09
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/