人財教育コンサルタントとして、「プロフェッショナルシップ研修」「コンセプチュアル思考研修」「管理職研修」「キャリア開発研修」など、多岐にわたって企業内研修を行われている村山さんに、働くことの意義・目的、スタイルをどのように考えればよいのかについてお話をうかがいました。 (聞き手:猪口真)
猪口 大きな「目的」のなさが、「働きかた」を単なる手段としているということでしょうか。日本の組織のなかでは、上司を含めた先輩諸氏をロールモデルとするケースが多いと思いますが、もっといろいろな経験を積むことも必要そうです。
村山 私はたまたま日米2カ国の大学院課程を経験しました。いずれも社会人になってから私費で入学しました。米国の大学院はデザインスクールでしたが、そこに入学してくる学生のほとんどは、会社勤めをいったん休止し、自分で貯めたお金で学び直しをする人が多数でした。在学中、学生たちは将来自分のデザインファームを立ち上げる夢をいろいろに語ります。そして実際、卒業後にそうする学生が多い。
ところが、私が日本で入った経営学修士課程(MBA)の大学院は、企業派遣(会社が費用負担して社員を入学させる)で来ている人も多く、当然、彼らは派遣元の企業に戻ることになります。卒業後のことが話題になっても、「どこの部署に配属されるかな。あそこだったらイヤだな」くらいの構えです。MBAを取得した後の職業上の夢などもあまり語られません。また、企業派遣の学生はたいてい自分のことを「名前@所属会社名」で呼称します。学生間の会話中もついつい「うちの会社では……」と主語が会社になったりします。企業派遣でなく自腹でMBA課程に来る人もいますが、やはり卒業後の就職となると、会社勤めが選択肢のようで、以前いた会社より年収アップ、企業ブランドアップの就職をしたいとなります。つまり、概して日本人はいまだ自己のアイデンティティのベースを所属企業に置きがちで、一職業人としての「個」の意識が弱いままであると私は感じます。
猪口 確かに、会社を辞めたあとでも、「○○の会社にいた○○です」という人はいますし、会社というのが、その人のアイデンティティのベースになっている人は多いと思います。ただし、そこは順番で、自分のアイデンティティを明確にしたうえで、組織で働くのか、あるいは別の選択肢を選ぶのかを考えなくてはいけないですね。
思う存分、既存の枠をぶち破る発想をしてほしい
村山 日本の働き手は全体として「雇われる生き方」に偏向しすぎています。意地悪な言い方をすれば、多くの人が何か「雇われたい病」にかかっているのではないかと思うくらいです。「雇われない生き方」、すなわち独立してみずからの事業を始め、自分で自分を雇うというキャリア選択肢がそもそも頭の中にない人が多いように思います。
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