人財教育コンサルタントとして、「プロフェッショナルシップ研修」「コンセプチュアル思考研修」「管理職研修」「キャリア開発研修」など、多岐にわたって企業内研修を行われている村山さんに、働くことの意義・目的、スタイルをどのように考えればよいのかについてお話をうかがいました。 (聞き手:猪口真)
しかし、いつの時代も若い人はエネルギーに満ちています。自分の没頭できることにはエネルギーを燃やします。「ヲタク」と呼ばれる人たちもその1つでしょう。ただ、「カイシャ」という組織の中で、そのエネルギーのやり場をどこに向けるかがわからないというだけではないでしょうか。
猪口 ビジネスのスポーツ化というは、100年前から指摘されているんですね。しかもプレイヤーが利益を得るならまだしも、オーナーや組織だけが利益を上げる構造であることに気が付けば、プレイヤーのなかで、多少ポジションが上がっても意味を感じないのも無理はなさそうです。
一方、村山さんがそうであったように、大きな組織から抜け出し、自らの力でビジネスを切り拓こうと考える若者もいます。
村山 ITベンチャー系の会社で、経営者が夢を語り、組織構造をフラットにし、個々の社員に権限委譲してやりがいを持たせているところは、若い人が躍動していますね。そういう現場で嬉々として働いている人は、組織内の出世のためとか、昇進目的で働くわけではありません。単に仕事が楽しいからです。自分たちの仕事のアウトプットが人から「いいね!」と言ってもらえ、メディアで話題になったり、人びとのライフスタイルを変えていったりすることになれば、勝手に元気に働き出します。多くの会社がそういう事業現場にしていく必要があるように思います。
猪口 ところが、多くの会社では、自由な働き方を支援する動きも見せながらも、利益を上げるために生産性の向上の号令をかけているのが実態だという意見もあります。これから働き手としてどう考えればいいのでしょうか?
生産性を上げるというのは永続的なテーマですから、いまに始まったことではありません。また、働き方の選択肢が増えていくというのも時代の必然の流れです。ですから、コロナ禍でそういう流れが強まっているのだなと、働き手は淡々と受け止めればいいだけではないでしょうか。
いま日本の多くの会社経営で起こっている残念な問題は、最上位の目的が何であるかが語られることなく、付け焼き刃的に「生産を上げる」「働き方を多様化させる」が目的化していることです。本来、生産性や働き方は手段としてあるもので、最も大事なことは、事業や仕事を通じて、何を成し遂げていくか、自分がどんな人生を送るかです。
私が行っている研修では、その大いなる目的を見つけることに重きを置いています。大いなる目的を抱いた働き手は、生産性や働き方の問題について悠然と構えることができると思います。結局、生産性や働き方で大騒ぎしている経営者や働き手は、何が最上位の目的であるかを考えることから逃げている人ではないでしょうか。
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インサイトナウ編集長対談
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