国家政策として膨大な資金を投じながら、将来のエネルギー選択肢としては不適格なことが明白になってきた原子力発電。日本という国の将来を見据えれば、その膨大な無駄金を将来のエネルギーである燃料電池と水素発電のための技術開発やインフラ普及に思い切って振り向けることこそが日本再生戦略だ。
欧米で原発を諦める選択に踏み切る電力会社が続出したのは、合理的な経営を余儀なくされている彼らは「まともな神経ではこんな経営リスクの高い発電所を運営できない。こんなに安全対策コストが嵩むのではそもそも経済メリットすらない」と素直に考えたからだ。
ここにさらに「放射性廃棄物の処理・処分」という大きなデメリットが加わる。小泉元首相が言う「トイレのないマンション」論である。
運転に伴って発生する「低レベル放射性廃棄物」は青森県六ヶ所村にある低レベル放射性廃棄物埋設センターで埋設処分される。これも問題だが、まだ小さいほうである。同じ六ヶ所村に建設中の核燃料再処理工場では、原発で発電を終えた核燃料(使用済み燃料)の中にあるプルトニウムを再び原子力発電で再利用することになっている(これが日本の原子力政策の基本である「核燃料サイクル」である)が、実際にはこの再処理工場が稼働したことはなく、ずっとトラブルが続き計画が遅延する一方なのである。
問題の一つは(他にも色々とあるので代表として採り上げる)、この「稼働しない」核燃料再処理工場のコストが倍々ゲームで膨らんでいることだ。当初公表されていたのは建設費だけで約7600億円。ところが建設開始10年後の2003年に電気事業連合会により公表された数字によると、建設費約3兆3700億円、運転・保守費約6兆800億円、工場の解体・廃棄物処理費約2兆2000億円、しめて総費用約11兆円に膨れ上がっている。さらに2020年現在で13兆9400億円と見積額は増加しており(六ヶ所工場の費用を含めたバックエンド費用の総額は約19兆円にも達するとされている)、この調子ではさらに増える見込みという。
これは電力会社だけではとても負担し切れない額なので、確実に国民にツケが回ってくる。既に「核燃料サイクル」政策は破綻しているのである(問題は、どの政治家が蛮勇を振るってこの馬鹿げた政策の旗を降ろすかだけである)。
こういったことをトータルで考えると、原発というのは実は運転コストも全然割安でなく、むしろ割高なのだ(原発のトータルコストについては電力会社がフェアで正確な数字を出したがらないので不明な部分が少なくないが、御用学者でない第三者の専門家が何人も研究成果を発表している。その一つが大島堅一氏の『原発のコスト』である)。
さらに福島第一原発の廃炉で分かるように、原発は廃炉コストも実に高い。NHKのまとめでは、全国各地の原発や原子力関連施設の廃止にかかる費用の総額は少なくとも6兆7205億円に上ると試算されている。1基当たりの平均は577億円となる。造るも地獄、使うも地獄、止めるも地獄、といったところか。
社会インフラ・制度
2020.05.10
2020.05.25
2020.11.18
2020.12.16
2021.01.06
2021.01.20
2021.02.13
2021.03.11
2021.06.09
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
