/よく西欧の歴史観は、天地創造から最後の審判まで直線的だ、などと言われるが、じつは、エデンの園に始まり、エデンの園に終わる、きれいな歴史の円環になっている。/
J つまり、カトリック教会は、わけのわからない原罪と煉獄で脅して、信仰を勧めたわけですね。
でも、ローマ教皇権を認めない東方教会などでは、むしろ母マリアにイエスへの執り成しを願うことが広まります。当初、マチズム(男権主義)のパウロなどは、母マリアの完全無視を決め込んでいるのですが、なにしろ母マリアは、神に直接に選ばれ、処女懐胎どころか、生まれながらに無原罪という、歴代のローマ教皇以上の唯一無二の超特別な人間で、この世を去ってすでに直接に天国に引き上げられていることになっていますから、執り成しを頼むなら、教会よりも母マリア、となるのも当然。だから、カトリックもこれを認めざるをえず、西方でもマリア崇敬が広まっていきます。
J もともと植物的な地母神信仰の発展形だから、地獄や煉獄からの再生なら、母マリアの方が本家本元でしょうね。
じつはほかに、辺獄、リンブスというのもあるんですよ。死んで、天国に昇るでも、煉獄に墜ちるでもなく、未決囚みたいなのの溜まり場。聖書でも、教義でも、位置づけがはっきりしませんが、きちんと煉獄に繋がれていなくて、ときどき地上にぷらぷら出てきてしまう亡霊みたいなのは、この辺獄の連中ということのようです。
J ま、なんにしても、最後の審判で、ぜんぶ仕分けされるんですよね。
とはいえ、これも、けっこう段取りが冗長で面倒なんですよ。この究極のリセット方法は、以前から巻物に七つの封印で閉じられていたのですが、イエスが昇天したことで、ようやくこれを開けるようになったのです。
J 大統領しか押せない最終核兵器の発射ボタンみたいですね。
で、イエスがその封印を解くと、第一に白馬の支配騎士、第二に赤馬の戦争騎士、第三に黒馬の飢饉騎士、第四に青馬の疫病騎士が現れ、第五で復讐を求める殉教者たち、第六で天変地異、そして、四隅の天使たちに守られて信者たちが第七の祈りを捧げる。次に、七人の天使のラッパ。第一で火雨、第二で火山、第三で隕石、第四で暗天、第五で機械獣、第六で戦車隊、そして、第七で契約の箱。
J なんかSFっぽいなぁ。
まだまだ。この後、天で悪魔が天使ミカエルと戦って、地上に落とされますが、それが三年半に渡って地上を支配。しかし、天から鎌が投げ入れられ、神の怒りの七つの鉢を地上に。そして、ハルマゲドンの地で、悪魔に仕える地上の王たち、大淫婦のバビロンを滅ぼす。この勝利の後、小羊の婚礼の祝宴。
J まあ、結婚式でハッピーエンドというのは定番でしょうけれど、それ、誰と誰の婚礼ですか?
哲学
2020.06.07
2020.06.27
2020.07.27
2020.08.15
2020.10.21
2020.12.04
2020.12.08
2021.03.12
2021.04.05
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。