レバノンに逃亡したゴーン被告の記者会見が行われましたが、その内容は自己弁護と激しい日本の司法批判に終始し、対する日本からは批判の声が多く聞こえます。ゴーン会見からは何も新たな情報は無く価値がないと評する司法専門家や、犯罪者のくせに自己弁護と自画自賛ばかりで許せないと声高に反発する、日本のおじさんたちとグローバルコミュニケーションのギャップを感じました。
1.ゴーン会見の目的
ゴーン会見に対して「何も新たな情報が無い」「すべて想定の範囲内で何ら意味は無い」「犯罪者が偉そうにしゃべるな」と専門家や、素人のおやじ友達は反発していました。「日本の司法が悪い」「私は悪くない」というメッセージに終始した会見ですから気分を害する日本人が多いのも当然かも知れません。
いかにダメ会社だった日産を自分だけが生き返らせ、巨額の利益をもたらせたか、自分がいなければ存続できるはずもない会社を建て直し、結果として得た報酬はそもそも多額といわれる筋合いはないというような自らの能力をバンバン自賛します。厚顔無恥もはなはだしいそのプレゼンは日本人にケンカ売ってるのか、と思う勢いです。
加えて人質司法、99%有罪といわれる日本の刑事制度や取り調べにおける不当な取り扱いなど日本の司法批判も日本人の愛国心を損なうものだったでしょう。そんな反発をゴーン氏ほど頭の回る人物は予見できなかったのでしょうか?なぜ素直に謝罪するのではなく、日本人全員から反発を買うような会見にしたのでしょう。
2.日本の(おやじたちの)反発と外資
そもそもゴーン氏の会見の目的は謝罪でも何でも無く、はじめから自己弁護だったからです。自己弁護とそのための自画自賛、それに伴う日本以外からの国際世論の支持を得ることを目的とするコミュニケーションである以上、すべて予定通りに会見は進められたといえます。自分が犯罪で訴追されているのに自己肯定を堂々と行うことに対する反感や批判は、ゴーン会見の目的と全くずれたものとになります。
かつて「日本産業」と、国の名を冠した財閥企業だった日産。今や日産は日本における最も巨大な外資系企業の一つです。日頃進路指導している学生たちにも、ゴーン氏を知らない者はいないにも関わらず、日産が日本最大級の外資系企業だという認識を持たない者がほとんどです。
グローバル化の流れで勤務先が外資系企業に買収されたり、外資系企業に転職する人も増えたでしょう。しかし「外資」と一言でいっても、オフィスの半分が外国人、それも欧米系白人だったり、社内文書やメールがすべて英語というようなものはドラマや映画の世界です。私が知る限り圧倒的に多くの外資系企業のオフィス環境は、見た目で日本の企業とのがつきません。
外資とは「資本」が外国人に握られていることですから、実際に外国人がオフィスにいなかったり、社長や役員以外全員日本人の外資などごく普通です。しかし、外資は外資なのです。この意味がわからないドメスティックな感覚で勤務すると悲劇が起こります。特に長年日本のドメスティック企業の体質が染みついた人は、大きく混乱し、迷走する恐れが高いのです。
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2009.02.10
2015.01.26
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。