組織・人事に関わる全ての施策は、日本人の特性や自社の独自性への洞察なしには機能しない。それは、OSが違えば、アプリが動作しないのと同じである。欧米の真似でもない、うまくいっている会社の真似でもない、日本企業において本当に機能する組織・人事の考え方や施策について思索・指南する連載。
シナジーを発揮するコミュニケーションは、「興味・関心の発信」「共感と違和感の発信」「意欲と信頼の発信」の三段階から成る。互いに忌憚のない本音を述べ合い、一致点と相違点を整理しながら、相違点を解消する第三案を出し合って合意にこぎつけ、その実行を約束する。こうして出来上がった合意と約束は、それぞれの役割行動や業務行動を変化させる力を持つ。
当たり前のようだが、この三段階は、よくある組織内コミュニケーションとは大きく異なっている。職場を振り返ってみれば、「まず話を始める」人が多いだろう。質問をせず、したとしても「客観情報のみ」で、相手の思考や感情や意見まで踏み込んで聴き出そうとする人は希少だ。リアクションがない、少ない人も本当に多い。それなりに聞いてはいるのだろうが、うなづきやあいづちなどの反応がないので、見ていると聞いていない感じがしてきて話すモチベーションが下がってくる。これでは、分かっているつもりになっているだけで、実は相手の言いたいこと、思っていることはほとんど理解できていないだろう。相違点だけにフォーカスしてしまったばかりに、相手の案のデメリットを指摘して終わるような会話・会議も多い。相違点を「まあまあ」とウヤムヤにするような会議も多い。案を出さない人、合意するより説得することに熱心な人も散見される。よくある組織内コミュニケーションは、ざっとこのような状況であり、そこから導かれた結論に人の行動を変える力はない。
【つづく】新しい「日本的人事論」
2018.09.19
2018.10.10
2018.11.17
2018.11.29
2018.12.13
2019.01.31
2019.02.27
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。