ロジカルシンキングを越えて:9.「海の水を全て沸かす病」の症状と処方箋

2018.09.01

経営・マネジメント

ロジカルシンキングを越えて:9.「海の水を全て沸かす病」の症状と処方箋

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

ロジカルシンキングブームが去ってから長いものの、ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングには大いなる誤解や形式に偏った理解がよく見られます。ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングとは何なのか?何でないのか?誤解や偏った理解を含めて概観しつつ本当に使えるやり方を明らかにしていきます。

そのクレーム発生率を下げるために、デリバリー(サービス提供)を必死でやろう、となる。

でも、デリバリーのコストが上がって、ペイしなくなる。これじゃペイしない。現場のマネジャーとしては、サービス残業を強要したりするという解決策もないわけではない。

なんとかペイさせるために無償労働、サービス残業を従業員に強要することを選んだとしましょう。

すると、だんだん離職率が上がり、いつの間にか、サービスレベルが低下してしまう。そうすると、クレームはやまず、更には次々に新しい人員を採用せざるをえないことになり、採用コスト、教育コストが上がってしまう。人がいつかない、クレームがやまないという目の前の状況を見て、現場のマネジャーは「どうすればいいんだ」と途方に暮れる。

まるでモグラ叩きですが、現場のマネジャーはこういう状況の中で回し続けるのが仕事だったりします。

「なんとか耐えてくれ」以外にメッセージの出しようがない場合も多々あります。こういう現場を企画の人が見ると、「はじめからちゃんとやりゃあいいのに」とあきれたりもしますが、現場の人は日々のオペレーションを回すことで手一杯です。

たとえ企画の人がやったとして同じような結果となるでしょう。そういうものです。

ただ、こういう指標をバラバラに見て、施策を1つ1つにやっていこうとしても、未来永劫続くモグラ叩きゲームをやり続けるだけです。

上記の現場マネジャーはどのように思うかといえば、因果関係を考えるよりも、クレーム発生率が高いこと、人の離職率が高いこと、つまり結果としての現象に着目するだけです。たいていの場合、その根本原因にクロージング率を無理やり上げていることに着目したりはしません。

確かに経営はモグラ叩きゲームのような側面があることは事実ですが、モグラが一気に顔を出し続けるとビジネスプロセスが崩壊するという事態に陥り、サービス提供ができない状況となります。お客さんの数が一気に減り、収益性が悪化し、最悪はビジネスが継続できなくなります。

少なくとも、モグラがしばらく顔を出さずに、収益性が向上するような施策を考えて実行したい。

でもね、会社のデータをひっくり返して、指標をひたすら見て、相関を見ても、重労働のわりに、因果関係を読み違えてとんでもない施策を提案したり、モグラたたきより少しましなアクションを次から次へと打たざるを得ないという状況になったりするのが関の山です。

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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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