ロジカルシンキングブームが去ってから長いものの、ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングには大いなる誤解や形式に偏った理解がよく見られます。ビジネスプランニングにおけるロジカルシンキングとは何なのか?何でないのか?誤解や偏った理解を含めて概観しつつ本当に使えるやり方を明らかにしていきます。
「ファクトのないあなたの話は聞けないよ。今現在どうなっていて、どうすべきなんだ?」
企画職の上司が典型的に言う言葉です。知りたい病を一通り経ると、今はどうなっているか?というのを数字で示し、そこから問題点を抽出し、提案することが求められていることがわかるようになります。それをしかも効率的にやらねばならない。
企画職としては当たり前なのですが、こう言われると、
(1)今現在どうなっているのか?をひたすら調べる。
(2)そこからどんな施策がありえるか?をひたすら考える。
(3)調べたことと施策をまとめて提案する。
が正しいように思えてきます。実はここに落とし穴がある。
しかし、このロジックのおかしさに気づくのはなかなか難しい。世間的には常識に見えるからです。コーポレートガバナンス的にも、意思決定はしっかりと事実を踏まえた上で、客観的に正しいというアクションを選ぶべきだ、それが株主への責任だ、というロジックがまかり通っている面もあるのです。
そんなことをすれば企業は競争力を失うことは明らかだというのに、気づかない人も多いのです。ある意味で恐ろしい。この誤解もとかないと、日本の競争力を復活させることは難しいとも思いますので、ここはしっかりと見ていきたい。
しかし、誤解を解くと言うより、しばらくこの通りにやってみれば、このロジックが机上の空論だということが身を持ってわかります。どういうことでしょうか?
これをやろうとすると、体がもちません。どんな素晴らしき情報システムがあっても、体がもたないのです。
これが「海の水を全て沸かす病」ですね。
いまどき、会社の経営に関する数字なんていくらでも出てきます。それをひたすらクロス集計かけても、意味のある読み取り方ができるような数字はなかなか出てきません。数字をこねくり回して、多変量解析やら、データマイニングでいろいろやろうとしても、よくわからない結果しか出てきません。当たり前です。この作業をやり続けるうちに、時間と体力が尽きてゲームオーバーとなります。
ただ、たまにきれいな相関が出るような指標同士が出てきます。
例えば、国家のデータを見てみると、インフレ率と経済成長率の相関が高く出たりしますよね。きれいに正の相関が出る。クロス集計を数百個も作ってこの結果が出たら、飛びつきたくなります。そして、この結果から「インフレを起こせば景気がよくなる」というアクションを見出す人もいるかもしれません。
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ロジカルシンキングを越えて
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。