人口減少は日本経済の大きな課題であり、なかでも生産年齢人口の減少は人口の1.5倍以上の速度で進むと言われています。つまり今後の日本経済は、需要の縮小と労働力の喪失が加速することで、多くの日本企業は存亡の危機を迎えることになります。これは事業の競争環境がどのように変わることを意味しているのでしょうか。
“労働力喪失時代における持続可能な社会経済システム 『スマートエコノミー』の実現をめざして”と題して、サービス産業生産性協議会から提言が発表されました。これは、人口減少に伴う生産年齢人口の急減を目前に控えた日本の喫緊の課題である生産性向上に向け、社会経済システムの 再構築と経営戦略の転換をめざすべく、まとめられた提言です。今回はこの中から、サービス事業の改革に熱心な方々に関連しそうな、印象的だった点や所感を共有させていただき、これからの時代のサービス事業の在り方を考えたいと思います。
2040年までに100万社の日本企業が消失する
人口減少は日本経済の大きな課題であり、なかでも生産年齢人口の減少は人口の1.5倍以上の速度で進むと言われています。つまり今後の日本経済は、需要の縮小と労働力の喪失が加速することで、多くの日本企業は存亡の危機を迎えることになります。
提言の中にこんな推計が掲載されています。(出所:財務省財務総合政策研究所 『フィナンシャルレビュー』2017 年 6 月、131 号)これによれば2040年までに、現在、約400万社ある企業の約25%にあたる100万社が姿を消すというというのです。
これから先、企業の生存競争が激化する中で、日本経済の大部分を占めるサービスの生産性向上の必要性は高まります。まさに、サービス競争の新時代に突入するのです。
このサービス競争の新時代を生き抜くために、サービス事業としてどうしていったらよいのでしょうか。提言されている具体策の中から、いくつか取り上げて考えてみたいと思います。
まぐれ当たりのサービス経営から抜け出す
新時代は、これまでの勘と経験に頼ったサービス経営で生き抜けるほど甘くはありません。サービス事業の推進者自身が、サービスの本質を理解せずに、個人的な価値観と経験知のみで、サービスビジネスをマネジメントする時代ではなくなるのです。精神論や個人芸に頼り切るのではなく、本質を捉えてサービスの価値を向上し、組織的に事業の成長力や競争力を高められるような、強いサービス事業にステージアップすることが欠かせません。そこで、提言ではサービス科学(サービソロジー:サービスに対する科学的・工学的アプローチ)を経営に活かすべきだとしています。
他にも、サービスの研究開発や、人材育成へのテコ入れとともに、サービス経営の軸を大きくシフトすべきとの提言もされています。次回はこの点について取り上げてたいと思います。
サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
2011.09.21
2011.06.12
2011.04.29
2011.04.23
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2019.08.07
2019.08.21
2023.05.19
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新