Only Oneになる課題探索型ビジネススタイル

2011.04.23

経営・マネジメント

Only Oneになる課題探索型ビジネススタイル

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

競争力向上や営業力向上のために「提案型ビジネス」を強化しているけれど、なかなか提案がお客様に受け入れられず苦労しているという方が多いのではないでしょうか。実は今、世の中のビジネススタイルが一気に変わりつつあります。そこでいま一度、お客様のニーズの持ち方が大きく変化してきたことを再認識し、そして「課題探索型」というビジネススタイルを意識することで新たな可能性を切り拓くきっかけになればと思います。

■「モノが欲しい」時代

日常生活に必要なモノが不足していた時代には、顧客のニーズはもっぱら「モノが欲しい」というものでした。テレビが欲しい、車が欲しい、パソコンが欲しいなど、モノを所有すること自体が自己実現の手段。この時代の製品は基本機能さえ備えていればよく、機能面での個性よりむしろ手が届く価格に抑えることが求められていました。裏を返せば、いち早く製品価格を下げることで「作れば売れる」であったため、企業では画一な大量生産と、業務の効率化・システム化を進め、製品のコストダウンに注力していました。

のころのビジネススタイルは、顧客のニーズが明快であったため「受身型」だったと言えます。具体的には、注文されたものを作ることや、指示された通りにサービスを提供することに重きが置かれていました。しかし、同質のモノが増えてくると「受身型」ビジネススタイルで生み出せる付加価値が低下し、価格競争が激化することとなります。匠の技やセンスで高い付加価値を実現していたような企業の多くは価格競争の末に仕事量の減少に苦しむこととなってしまいました。

■「良いモノが欲しい」

 この頃になると欲しいモノが一通り手に入り、顧客ニーズが「よいモノが欲しい」へと変化します。顧客は画一的なモノに飽きてしまい、より自分に合ったモノ、自分だけのためのサービスを求めるようになりました。そこで企業では、もはや一般的な提案は価値が無いとみなされてしまうため、「One to One」で個客のニーズを聞き出し、そのニーズに応えるための提案や商品開発をしていこうという「提案型」のビジネスモデルへとシフトすることとなります。

 企業の投資の対象はコストダウンから、ニーズに合った新商品開発へとシフトし、様々な機能をもった商品やサービスが生まれました。但し実際には、直接顧客ニーズを聞くことやそのニーズが大多数の顧客を代弁していることを確認することは難しく、顧客ニーズを推測したり、流行モノを提案することでどうにか個客ニーズに応えようとしたケースも多いのではないでしょうか。

 しかしここ数年、徐々に提案をニーズにフィットさせることが難しくなってきています。「何が欲しいですか?」「どんな機能が必要ですか?」「どうなりたいですか?」と聞いても、顧客自身がダイレクトに答えられなくなっているのです。それはなぜか。

■「欲しいモノが分からない」

 顧客自身、欲しいモノが分からない時代になったからです。ITが高度化し、モノや情報が溢れている中で、何が欲しいかが分かりにくくなった世の中になりました。企業においても、業務が高度化・複雑化し、企業自身も自社の改善や改革において何をどうしたらよいかが見えにくくなっています。
世の中はどうなってるのか?何をすればいいのか? やりたいことのイメージはいくつもあるけれど、どうやったら良いか分からない。何から手を付けたらよいか分からない。

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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