「日本サービス大賞」第一回受賞企業が発表され、日本の優れたサービスに注目が集まっています。これまで、目に見えない「サービス」を科学することで、評価の高いサービスに必要な本質的な考え方や方法論を明らかにしてきました。そこで今回は「優れたサービス」とはどんなものなのかをひも解いてみたいと思います。
「日本サービス大賞」が日本最高峰のサービス表彰制度として2015年に創設され、第一回受賞企業が発表されました。この表彰制度は、サービス産業生産性協議会(SPRING)が主催する優れたサービスを表彰する制度です。サービスの生産性というと「効率化」の方ばかりが着目されがちですが、今まさに「サービスの価値を高めること」への関心が高まっています。しかし、いざサービスを磨き上げようと思っても、いったい何から手を付けたら良いのかと悩んでしまいます。そもそも、優れたサービスとはどんなものなのでしょうか。これまでの記事で、目に見えない「サービス」を科学することで、お客様からの評価の高いサービスを実現するために必要な本質的な考え方や方法論を明らかにしてきました。これらの考え方にも触れながら、「優れたサービス」とはどんなものなのかをひも解いてみたいと思います。
「日本サービス大賞」が定義する優れたサービスとは
日本サービス大賞では、「優れたサービスとは、受け手の期待を超える経験価値を提供するサービスである」としています。つまり、優れたサービスはお客様の期待を超えるサービスだということです。ちなみにサービスサイエンスでは、サービスの定義は「提供される機能の中で、お客様の事前期待に合っているものだけをサービスという」としています。お客様の事前期待を掴んでそれに応えなければ「サービス」ですらないということです。
このように、お客様の期待に応える・期待を超えると聞くと、つい我々は「どうやったら期待に応えられるだろう、期待を超えることができるだろうか」と考えがちです。実際に多くの企業では、サービスやCSの向上に取り組む場合、「具体的に何をやったら良いだろうか」という観点で議論しています。
しかし、「何をやるか」以上に大切なことがあります。それは、「我々はどんな事前期待に応えるサービスを提供するのか」を明らかにすることです。つまり、「満たすべき事前期待」の目標を決めずにあれこれ努力することは、目隠しをして的を狙うようなものです。これでは、まぐれ当たりくらいはあるかもしれませんが、優れたサービスは提供できません。まずは、目標地点として「満たすべき事前期待」をしっかりと見定めることが大切なのです。
どの事前期待に応えるかで、サービスの評価は大きく変わる
満たすべき事前期待の目標地点を決めるといっても、応えて当然な事前期待を目標にしたところで、サービスの評価は高まりません。どの事前期待に応えると価値があるのかをしっかりと見定めるべきなのです。
サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
2011.09.21
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新