「日本サービス大賞」第一回受賞企業が発表され、日本の優れたサービスに注目が集まっています。これまで、目に見えない「サービス」を科学することで、評価の高いサービスに必要な本質的な考え方や方法論を明らかにしてきました。そこで今回は「優れたサービス」とはどんなものなのかをひも解いてみたいと思います。
例えば、事前期待の中にはお客様全員が共通的に持っているもの(共通的な事前期待)があります。これにいくら応えても、お客様からは「当たり前でしょ」と言われてしまいます。サービスの評価を高めたいと思ったら、共通的な事前期待に応えるだけではダメなのです。お客様ひとりひとりで異なる「個別的な事前期待」や、「状況で変化する事前期待」「潜在的な事前期待」に応えることができると、感動サービスやホスピタリティーサービスのような高い評価を得ることができます。
(事前期待については、連載サービスサイエンスの第3回「事前期待とは」をご覧ください)
期待を超えるサービスであれば何でも良いのだろうか?
日本には素晴らしいサービスがたくさんあります。その多くが、お客様の期待を超えています。しかしそういったサービスであっても、カリスマやベテランの個人的な経験やセンスに頼って生み出されていることが少なくありません。もちろん経験やセンスは大切ですが、それだけに頼っていては、素晴らしいサービスを提供し続けることはできません。そこで今、多くの企業では、現場任せ、個人任せなサービスから脱却して、組織的にサービスを高めることに熱心に取り組んでいます。つまり、日本サービス大賞でいうところの、優れたサービスを「つくりとどけるしくみ」の構築や強化に積極的に取り組んでいるのです。
優れたサービスとは、「価値ある事前期待」に応えるものであり、サービスを「つくりとどけるしくみ」によってそれを現場や個人に任せっきりにせずに組織的に実現しているサービスだと捉えることができます。
日本には優れたサービスはもっとたくさんあるはず
これからますます注目されるであろう「優れたサービス」を単に事例として表面的に捉えるのではなく、「どんな事前期待に応えているのか」、「そのサービスをつくりとどけるしくみはどんなものなのか」という視点でひも解いてみると、そのサービスの本質に迫ることができるかもしれません。そうすることで、例え他業界のサービスであっても、自社のサービスとして活かすべきヒントが得られるはずです。このように、業種や業界の枠を超えて刺激しあうことで、日本らしい優れたサービスがもっと増えてくることに期待したいと思います。
サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
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松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新