2018.05.21
VUCA時代、今のサービス人材育成で本当に乗り越えられるか|service scientist's journal
松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービスの事業成長を加速するために、人材の育成は欠かせません。しかし今は、先が読めない変化が起こるVUCA時代。これからの時代に必要となるサービス人材育成を考えます。
VUCA時代?そんなことは前から分かっているのでは
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑さ)、Ambiguity(曖昧さ)の頭文字をとった言葉です。様々なことが複雑化して先の読めない変化が起こる時代になったことを表す言葉で、近年世界中で使われています。
「VUCA時代?そんなことは改めて言われなくても、かなり前から分かっていることでしょ。」この言葉を聞いた第一印象です。しかし、それで済ませたらもったいない。これまで成長を遂げてきたサービス事業は、その多くが積極的に変化のきっかけを掴んでいます。新たな人や考え方との出会いだけでなく、リーマンショックや不況のような外部環境の後ろ向きな変化も、前向きな成長力に変えているのです。成長しているサービス事業に習えば、VUCA時代も前向きな成長のきっかけにできるはずです。
VUCA時代 × サービス人材育成
先の読めない変化の時代を乗り切るためのサービス人材育成ができているでしょうか。
多くのサービス事業において、人材の育成はOJT(On the Job Training)を都合よく解釈して「経験を積みなさい」「背中を見て学びなさい」と、個人や現場に任せきりになっています。もちろん、個人の経験やセンスを磨くことは大切です。ただし、それだけに頼っていては、サービス事業を推進するような人材は育成できません。
サービス改革の一環で、人材育成体系をテコ入れすることが少なくありません。人材の採用や育成は、対外的には“チャレンジ精神”などを掲げている企業がたくさんあります。しかしその実態は、たとえば“上司の言うことを素直に聞く、ものわかりの良い人材”ばかりを採用して育成してきているようなケースがよくあります。上司や顧客に指示されないと動けない受け身型の人材では、先の読めない変化の時代を乗り切るには力不足といえます。これからの時代に成長するサービス事業の改革は、サービス人材の育成や意識改革と表裏一体なのです。
VUCA時代を乗り越えるサービス人材育成を考える
「もっとしっかり育ててあげよう」サービス人材育成のテコ入れでよく挙がる意見です。最近は、ゆとり世代、働き方改革、ハラスメント問題など、難しい時代になったので、若手をもっと手取り足取り丁寧に育ててあげるべきではないかというのです。しかし多くの場合、議論を進めるうちに、正反対の結論に至ります。これからのVUCA時代に、この事業をリードできる人材を育成するのであれば、“若手をもっと手取り足取り丁寧に育ててあげる”ではダメだというわけです。
少し極端な表現をすれば、手を差し伸べられないと成長できないようではいけない。さらには、育成すべきは“若手”だけでなく、むしろ事業推進と人材育成の要であるベテランやマネジメントこそ、テコ入れの必要がある。というものです。
次回はその人材育成の具体的な内容に触れます。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新