ハイパフォーマーの頭数で事業規模が決まっている。ハイパフォーマーは次世代の経営幹部候補者。ハイパフォーマーの育成は、事業成長を加速する重要な経営テーマです。しかし、ハイパフォーマーに人材育成を任せるだけでは、次なる人材を育成することは難しいものです。そこで、ハイパフォーマーの構成要素を理解して、その育成の盲点を明らかにします。
ハイパフォーマーはいったい何をしているのか
ハイパフォーマーから学びを得ようと、「何をやっているのか」と打ち手ばかりに着目している企業がたくさんあります。これではうまくいきません。ハイパフォーマーの意識や行動を紐解いてみると、そこには2つの要素があることが分かったのです。一方は先ほどの、何をすると良いかという「打ち手」、もう一方は、「顧客の事前期待へのアンテナ」です。
ハイパフォーマーと議論すると、「打ち手」は他のスタッフと大きな差が見られないことがよくあります。周囲からは、「そんなことなら、自分も以前からやっている」「それは以前やったけど、成果にはつながらなかった」との意見が出ることもしばしば。対して、「どんな事前期待を意識しているのか」を議論すると、ハイパフォーマンスの理由が明らかになります。顧客の事前期待といっても、挙げてみるときりがないのですが、その中で特に重視している事前期待を絞り込んでいくと、ハイパフォーマーならではの視点が浮かび上がるのです。
ハイパフォーマーは、「顧客が特に期待していること」への感度を高めることで、その事前期待に合わせて打ち手を変えたり工夫を加えているのです。いくら強力な打ち手を磨いても、そもそも顧客の事前期待を捉えられなければ、空振りしてしまいます。ハイパフォーマーを育成するためには、「打ち手」を磨くこと以上に、「事前期待へのアンテナ」の感度を高めることが欠かせないのです。
掛け声だけで感度は高まらない
「サービスのプロセスの評価を高めろ!」「事前期待への感度を高めろ!」と言われても、何をしたら良いか分かりません。そこで、以前触れた「事前期待の的」や「勝負プロセス」を明確にしたサービスの設計のテコ入れが有効です。ハイパフォーマーになるためには、具体的に「どんな事前期待への感度を高め、その期待にどう応えるのか」を、サービス設計として見える形に定義することで、人材の育成やサービスの価値向上を組織で加速することができるのです。
ただし、ひとつ問題が…
サービスの設計や人材育成の取り組みをテコ入れしても、肝心なサービスのマネジメントの方向性や力点がズレていては意味がありません。結局、組織的にサービスの人材を育成し、サービスの価値を高めるには、サービスのマネジメントを担うサービス経営人材の育成や意識変革が必要になるのです。そこで次回は、サービス経営人材育成の要点を整理します。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新