小さな会社がランチェスター戦略を手放すタイミングは?

2008.02.20

経営・マネジメント

小さな会社がランチェスター戦略を手放すタイミングは?

伊藤 達夫
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

 小さな会社は、軍事上の知見であるランチェスター戦略を経営に応用した考え方をすると、うまくいく場合がある。というより、強い大手企業を相手にして、成長を遂げていくためには、必須の考え方ではある。

 ちょっとキャッシュに余裕がでてきて、小さい業界であっても、地位が確立されてきたなあ、と思ったら、社長がいつまでも陣頭指揮をとれるわけでもないので、社長は企業全体の成長戦略を考えたり、もしくは組織体制の強化などを考えてもらって、すこしずつ現場に権限を委譲していく。

 このあたりのタイミングで、ランチェスター的な考え方、特に小さな会社が取るべき弱者の戦略としてのランチェスターは手放して、内部環境を重視する考え方、コアコンピタンス的な考え方に切り替えていくことが望ましい。

 コアコンピタンス的な考え方にも、トレーシーとウィアセーマが主張したような、業務オペレーションの効率の良さを突き詰めていくのか、社内の発想の良さを鍛えていくのか、顧客とのリレーション強化を突き詰めるのか?ぐらいの深さが必要であるとは思う。(この辺りの議論はまた後の機会に詳述します。)

 小さな会社だが、しっかりした地位を築いたのなら、これまでほど外部環境の変化に対応してアクションを打ち続ける必要性はなくなっているのである。ただ、やっぱりアクションを打ち続けないと売上は下がる傾向はあるし、それは怖い。

 ランチェスター的に、外部環境重視で築いた競争優位は、経営者がある程度安心できるキャッシュ量、地位を確保できたタイミングで、手放していくことができないと、次への階段は上れない。

 ある程度の大きさの企業を作りたいのなら、陣頭指揮を取ることをやめ、幹部に権限を委譲していく必要性がある。

 必ずしも、外部環境を重視することと、社長が陣頭指揮を取ることは、同義ではないのでは?と思うかもしれない。

 ただ、外部環境を重視した考え方から、内部環境を重視した考えに切り替えることと、ランチェスター的に外部環境に対応し、あまり内部環境を省みないアクションを打つことから、外部環境への細かな対応は手放し、コアコンピタンス醸成に向かうことはほぼ同義である。

 手放すのは確かに怖い。幹部をいきなり信用するのも怖い。自分のお金が減るのは怖い。社員に会社のお金を使う決定の権限なんて与えたくない。しかし、内部環境を信じ、コアコンピタンスを確立しないことには、次の成長カーブは描けない。
 
 さもなくば、社内を混乱させながら、外部環境の細かい変化に対応し続けるラットレースは、未来永劫続いていく。

 あなたは一生、走り続けなくてはならない。


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伊藤 達夫

THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役

THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。

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