戦略策定に際して、外部環境を客観的に分析することは非常に重要です。でも、客観なんて本当にあるんでしょうか?私は、外部環境分析のお話しをする時には、必ず騙し絵とビジョンの不思議な関係について説明します。
「老婆と貴婦人」と言われる騙し絵をご存知ですか?
絵は↓ですね。
小学校や中学校の教科書によく出てくるので、見たことがある人は非常に多いのではないかと思います。
この絵は、老婆だと思ってみると、老婆に見えます。そして、貴婦人だと思って見ると、貴婦人に見えます。
でも、同時には見えないですね。
老婆に見えるときに目の部分は、貴婦人に見えるときは耳に見えます。老婆の口に見える部分は、貴婦人の首に見えるんですね。
どんな全体か?によって、各部分の意味合いは変わってくるんです。
こういう部分と全体の関係性のことを「ゲシュタルト」と言います。初耳でしょうか?セラピー、心理学、科学哲学の世界では有名な言葉です。そして、経営学の世界でも、必須の概念だと私は思っています。
全体は、要素と、ある意味で恣意的な要素間の関係性によって、成り立っている。
そして、その関係性は、恣意的に変わる。昔の言葉で言うと「あばたもエクボ」でしょうか?
その相手を好きだと思ってみれば、「あばた」という吹き出物も、エクボに見えたりする。
全ては全体観と、関係性の中で成立するものなんですね。
そんなの当たり前だ、と思いますか?
でも、意外とビジネスでこのことを理解するのは、難しいのです。
例えば、コンサルティングサイドの人間が、シンクタンクを揶揄して言うのが、「シンクタンクの報告書には主語がない」という言葉です。
今期の売上は10%増、営業利益は5%増である。
というふうに書いてあったとして、その事象の意味合いは?という問いに答えていないというものです。
まあ、ファクトを集めることは集めることで、価値はあるんですけどね。ただ、コンサルティングバリューとは違うものですね。
それで、この「意味合い」というのが、関係性の中で物事を見る、ということです。全体として、老婆を見ようとしているのか、貴婦人を見ようとしているのか?によって、変わってくるということです。
その意味合いによって、企業がすべきこと、アクションは変わってきますよね。
あまりいい例ではないですが、今期の売上が10%増だったとして、5年後に目指している数値などによって、その意味合いは違ってきますよね。今時はあまりありませんが、5年後は売上が倍増する、という目標の中では、この10%は少ないという評価になりそうですし、もし、5年後に20%増の計画を立てているとすれば、10%は多いという評価になります。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。