経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。
名前は挙げませんが、「IoTによって効率が向上し限界費用がゼロに近づく社会がやってきた!」と言っている本がありましたが、ミクロのコストビヘイビアと、その後の経営学における理論と現実のコストビヘイビアの乖離の研究がすっとばされて、「IoTで効率性、生産性が極限まで高まり限界費用はゼロに近づく」といったことが書かれていてびびります。
ほとんどの製造業では限界費用はゼロに近づくんですよ・・・。効率っていう言葉の意味がわかっているんですかね。好意的にとれば社会全体の効率なんでしょうけどね。ミクロの教科書をはじめから読み直したほうがいいと思うんですよね。「ジャーナリスト」と言われる人たちの本ですから仕方ないんでしょうけど。
似たような誤解にまみれた本は過去にも出ています。
ソニーコンピュータエンタテインメントが出てきたとき、プレイステーションが出てきたときですね。
この時に、「IT産業では収穫は逓増する!」と言った経済の先生がいました。収穫逓増はメーカーだよ、というまっとうな突っ込みをした人はほとんどいません。規模の経済、経験曲線はそもそも収穫逓増をすでにもたらしていたんですよ・・・。
ネットワーク外部性は確かにあるわけですが、コストがネットワーク効果による便益の増大スピードにあわせて増えてしまったら打ち消されますよね・・・。ポーターの発表当時はネットワーク外部性はまだ研究途上ですので、ファイブフォースには盛り込まれていません。最近流行りの「プラットフォーム」はネットワーク外部性を踏まえたものになります。
まあ、いいでしょう。
さて、完全競争市場の前提条件に、コストの逓増モデルも含まれるのですが、あんまり誰も言わないんでね。書いてみました。
そうすると、「コスト逓増モデルも含んだ完全競争市場」からどれぐらい離れているか?でファイブフォースモデルは規定され、基本戦略はその延長上に出てきます。
差別化は財の同質性の裏返しですよね。更に言えば、ポーターはここに情報の非対称性も織り込んでいます。差別化された商品とは、買い手から認知されるユニークネスであり、それはロイヤリティが結果として生じると言っています。ブランドロイヤリティは情報の非対称性をポジティブに埋める概念ですよね。
買い手は買う製品のことは100%理解できるわけではない。サーチコストもかかる。だから、漠然と抱いているイメージで埋め合わせて、勝手に安心して買う。これが情報の非対称性をポジティブに埋めるブランドロイヤリティですよね。
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経営戦略構文100選(仮)
2017.08.30
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。