経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。
では、見つけた市場機会に基づいてどのように業務を構築すればいいのでしょう?エクスペリエンスと状況、ジョブへの対応を中心に業務を組むことで、競合が真似できない業務構築が可能だとクリステンセンは言っています。いわゆるカスタマージャーニーにおけるタッチポイントを中心に業務を組むということです。顧客接点を軸に業務プロセスを組めばいいわけですね。
では、クリステンセンに特有の考え方として、VCE/バリューチェーンエボリューションという考え方があるので、それについてここでは見てみましょう。
破壊的イノベーションで運よく当初の顧客を見付けて市場が立ち上がった場合に、成長スピードを最大化し、既存企業をハイエンドへと追いやっていくためには、顧客にとって商品が充分であるか、充分でないかの状況判断の上で、統合か外注かの意思決定をしないといけません。
いわゆるメイクオアバイ、垂直統合か水平分業かの選択の問題です。つまり、バリューチェーンがあった時に、自前でどこまでやるのか、外注をどの程度使うかの判断が必要だということです。
一般的には垂直統合/水平分業の意思決定は競争優位の源泉となるプロセスとの補完性で決定されます。競争優位の源泉となるプロセスとの結びつきが強ければ内製、弱ければ外注という考え方です。当然、作ってくれる会社があるのかないのか?といったことも大事ではあります。
しかし、クリステンセンの表現はちょっと違います。「顧客にとって製品が充分でないならば内製、充分ならば外注」です。表現だけの問題なのか、これまで言われていることと実質的に違うのかをちょっと考える必要がある論点です。
結論を言ってしまうと、クリステンセンはプロフィットと垂直統合/水平分業の関係をけっこう大胆に言い切っているところがこれまでの論者とは違うように思います。「顧客にとって製品が充分でないならば、垂直統合によって利益が取れて、充分ならば標準化されたプロセスに特化することで利益が取れる」と言っています。
詳しく言えば、「顧客にとって製品が充分でないケースでは、全体プロセスを自社で統合し、独自仕様で勝負した方が利益が出るが、顧客にとって製品が充分なケースでは、標準化が進むので、自社が得意なプロセスに特化し、迅速なスピードや柔軟な納入条件などによって利益が出る」ということです。
この「充分である/充分でない」をサインポストとしてバリューチェーンを自在に組み替えていくというのがクリステンセンの言うバリューチェーンエボリューションなのですが、言うほど簡単ではないですよね。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。