経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。
更にもう1つ抜本的な転換があります。
クリステンセンは「商品は人がたまたま状況に生じた問題を解決することに使っているに過ぎない」といった主張をしており、商品にフォーカスすることも否定します。では、どうすればいいかと言えば、クリステンセンは「ジョブ」という概念を使えばいいと主張します。
人、商品にフォーカスせずに、状況とジョブにフォーカスしろとクリステンセンは主張するのです。
最近は商品ではなく、価値や便益といった概念に着目することが増えておりますので、商品ではなくジョブというのは、比較的わかりやすいと思います。しかし、価値や便益は人とセットで捉えられることが多いので、ジョブと状況にフォーカスするのはとても難しいと思います。
ただ、ここではJTBDについては解説しません。以前に書いたJTBDという記事がありますので、そちらをご参照ください。
経営戦略構文100選(仮)/構文17:JTBD(https://www.insightnow.jp/article/9683)
上記の記事で、状況とジョブにフォーカスすることで、戦略/マーケティングの考え方が抜本的に転換することを説明しています。
ただ、それだけではないのです。クリステンセンがの主張はもっと深い。
では、それ以外にもどのような転換が起こるのかを「破壊的イノベーション」に沿ってクリステンセンのフレームワークを使って解説していきましょう。
破壊的イノベーションは、性能はさほど優れていない「破壊的技術」を用いた商品がローエンドから市場全体を侵食し、徐々に既存の大手企業を追い詰め、ついには駆逐してしまう現象です。
そもそも大手企業は高い利益率を求めます。だから、利益率の低いローエンド市場の防衛モチベーションは低いんですよね。そして、既存顧客の要望に応え続けるため、過剰性能が発生します。
今売れている技術が漸進的に進化して徐々に過剰性能に、充分過ぎる形になっていきますが、こういった「漸進的イノベーション」に適した能力の保持、つまりは資源選択、プロセス構築、価値観形成が大手企業には合理的です。既存顧客の求めに応じて、利益率高く事業が遂行でき、成長できる。全く問題がありません。
クリステンセンはこの「組織がもつケイパビリティ」を資源、プロセス、価値観の3つに分解して、RPVと呼んでいます。このRPVで進出できるハイエンド市場への進出が大手企業の成長をもたらします。しかし、このRPVはいったん固定化されると抜本的な変化がやりにくくなります。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。