経営戦略の基本的な内容を解説していく内容です。構文という意味はバラバラに読んでもそれなりに意味がわかって読める、定型化されているということですが、読み物としてもそれなりに読めることを目指します。
しかし、誰もそういうふうには解説しないので、次章以降で詳述していきましょう。クリステンセンの考え方の核心に触れることができます。
「イノベーションのジレンマ」自体は実証的な素晴らしい研究成果ですが、クリステンセンの考え方の核は全く別のところにある。私はそう思っています。そして、それがわからないと「イノベーション」を理解することはできないでしょう。近年流行の「エクスペリエンス」の理解にも役立つと思いますので、ぜひ、お目通しください。
さて、一般的な戦略策定はSTPから始まります。Sはセグメンテーションで顧客や商品を小さな集団に分けていく作業で、Tがターゲット設定で先に分けたどの集団をターゲットとしていくかを決める作業で、Pはポジショニング設定で、決めたターゲットに対してどのようなトレードオフ選択に基づく価値提供をするかを決めていく作業です。
しかし、クリステンセンはこれが違うと主張します。
一般的なセグメンテーションはセグメントごとに属性で平均化された人に対して価値を提供するものですが、それが違うと言うのです。そもそも、クリステンセンは人、モノにフォーカスしません。では、何にフォーカスするのか?
「状況」にフォーカスしろとクリステンセンは言います。それがあらゆる学問で行われる理論を導く正しい手法である。人の集団にフォーカスしても売れるという因果関係を導くことはできないと言うわけです。
これはマーケティングにおける経験的に語られる知見とも合致します。例えば、「意外と一人の顧客にフォーカスした方がいい商品ができる」という知見です。
平均化された顧客の集団に対して合わせて商品を作り、その集団に商品が売れることを狙うのだとすれば、平均化された顧客に向けた平均的な商品こそ理想の商品のはずです。しかし、マーケティング経験者はそれは違うと言います。「一人のお客さんをイメージした方が尖った商品ができて、その方が売れる」と。これは論理的には矛盾しています。
この矛盾の原因としては、理屈がどこかで間違っていると捉えるのが自然です。クリステンセンは人、商品を属性で分けるのが間違っていると言います。では何が正しいのでしょう?クリステンセンは、商品が購入される状況で分けることが正しいと言うのです。
これは戦略の前提条件の抜本的転換を意味します。これまでは人、商品を分けることを前提に全てを考えてきたのですが、状況を分けることを前提に枠組みを作り直さなくてはなりません。
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THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。