薔薇十字友愛団と三十年戦争を巡る会話

2017.10.23

開発秘話

薔薇十字友愛団と三十年戦争を巡る会話

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/応仁の乱と同じく、ヨーロッパの三十年戦争も、ややこしい。しかし、そのわかりにくさの元凶は、近代の領邦国家の感覚で理解しようとしているから。むしろ近代の領邦国家ができる課程でこそ、この戦争は起きた。同様に、われわれの未来も、現代の構図で理解しようとしたのでは、理解できないだろう。/

「この奇妙な薔薇十字教皇ウルバヌス八世の登場で、二四年、カトリックのはずのフランスやヴェネチアが反ハプスブルク皇帝家の側、つまり、プロテスタントの都市商人貴族側で参戦。ジェイムズ一世も、やむなくこれに加わるが、二五年に死んでしまった。その息子、チャールズ一世は、両親に輪をかけたような無能で、二七年にはフランスに宣戦布告」「もうわけがわからないですね」「負けて三〇年に戦争から手を引いたものの、やはり戦費で財政破綻。それで、一六四一年には清教徒革命が起きてしまう。バルベリーニ家も、四四年にウルバヌス八世が亡くなると、ローマから追放された。おまけに、このころになると、同じ反ハプスブルク皇帝家側で戦っていたはずのスウェーデンとデンマークが争い始め、結局、スウェーデンがバイエルンまで攻め込んで、四八年、皇帝側の敗北で終わる。翌四九年には、イングランドの無能王チャールズ一世も、革命で首を刎ねられてしまう。この処刑のときに、チャールズ一世は、フィリップ・シドニーの『アルカディア』の一節を吟じたんだとか」「自分も薔薇十字だと思ってたんですかね?」

「結局、三十年戦争って、なんだったんだ?」「すくなくとも、もう宗教戦争じゃなかった。中世的な商人貴族の都市支配や、ハプルスブルク皇帝家のドイツ支配が解体し、代わって面一帯を単位とする近代的な領邦国家群、とくに、フランスのブルボン王家がヨーロッパの中心になった、ということかな」「それで、その後のフランスが世界に植民地を持つほどの大国になっていくんですね」


『悪魔は涙を流さない』からの抜粋


by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。著書に『アマテラスの黄金』などがある。)

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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