14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第1章|自己〉第3話
「自己嫌悪とは自分への一種の甘え方だ、最も逆説的な自己陶酔の形式だ」。 (『人生の鍛錬』より)
すなわち、自分がきらいだ、いやだといって落ち込んでいるのは、じつは弱い心の姿勢であって、自分に甘えているだけと言っているのです。
たしかに、自分がいやになって、元気をなくして得になることはなにもありません。あるとすれば弱い自分に酔って、少しだけ「不幸の主人公」気分にひたれるだけのものです。小説や映画であればそうした不幸の主人公も美化され、人が感動してくれるのかもしれません。ところが現実はそうではなく、自己のなかに陰にこもる人は社会から取り残される危険性があります。
とにかく、現実のあなたはいまここに生きています。
そのような性格・才能を、そのような身体に詰め込んだ生き物は、この地球上(いや、宇宙のなか)にたったひとつしか存在しません。人類の長い歴史のなかでも同じ人間は存在しませんでした。それほどあなたの存在は唯一のものです。だから「これが自分だ」とおおらかにかまえてよいのです。芸術家の岡本太郎はこう言っています───
「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ。」「ひとつ、いい提案をしようか。音痴同士の会を作って、そこで、ふんぞりかえって歌うんだよ。それも、音痴同士がいたわりあって集うんじゃだめ。得意になってさ。しまいには音痴でないものが、頭をさげて音痴同好会に入れてくれといってくるくらい堂々と歌いあげるんだ」。 (『強く生きる言葉』より)
[文:村山 昇/イラスト:サカイシヤスシ]
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。