/新製品だ、新開店だ、と、いまだにバブリーな話題を自慢げに振りまいている東京の連中を見ると、頭がおかしいとしか思えない。そんな底の浅いものを追っかけ廻し続けて、その先に幸せがあるとでも思っているわけ?/
人間の歴史は一億年。その最後の数百年だけが、このありさま。逆に言うと、九千九百九十九万年以上の長きにわたって、人は静かで穏やかな生活の方こそを大切にしてきた。ただでさえ、誤解や不和、戦争や災害が人間に襲いかかる。そういうトラブルを避けることにこそ、人は知恵を駆使して、どうにかやってきた。しかし、近代は、知恵を濫用し、必要も無く、やたら人と交流したがり、よけいなものと作りたがり、人間が絶対に越えられない壁を越えようとして、かえって自分たちでトラブルを起こして八方塞がりになる。
幸せな生活を守る、というのは、それはそれで大仕事。無意味に活動的になって、よけいなことに手を出せば、かならずしっぺ返しがある。それよりも、よけいなことはしない。よけいなことには関わらない、関わらせない。そもそも、よけいなことなど、するまでもない。小さくても、落ち着いた生活を大切丁寧に守っていれば、それが幸せ。自業自得で幸せを失ってしまった愚かな躁の亡霊たちの大音量のささやきに騙され、よけいな邪念野心を抱いたりすれば、手もとにもともとあったはずの大切なものさえも失ってしまう。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。近書に『アマテラスの黄金』などがある。)
哲学
2017.07.04
2017.07.20
2017.08.02
2017.08.30
2017.09.09
2017.10.18
2017.11.19
2017.11.22
2017.12.31
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。