世界的トランぺッターの日野皓正氏の中学生への指導?暴力?が話題になりました。コミュニケーションの視点からはその是非ではなく、昨今の炎上事件と同じくコミュニケーション環境の変化を理解する素材だといえます。しかし問題は「一般人のリテラシーが低い」ことではなく、全く情報理解能力がなく意見発信している「識者」の方ではないでしょうか。
「日野皓正さんが誰だか知らなくとも、どうやら有名なミュージシャンらしい人で、それが中学生を公開の場で殴った」ネットニュースなどではこうしたラフなあらすじだけが独り歩きします。そうすると受け取った人の中には「体罰は暴力。絶対ダメ」とか「いくら学生でも監督者(日野氏)の指示に従わなければ体罰は必要」などとどんどん自分に都合良く解釈が分かれます。
「都合良く」というのは自分の感情表現に都合が良いという意味です。つまり体罰絶対反対という意見の人にとっては、いかに日野氏がだめかを訴える根拠となり、体罰容認派には「止むに止まれぬ体罰は認めない方がおかしい」と両極端にわかれます。当然わずかなテキストだけによる事実認定事態が異なっているので、結論に妥協点など出る訳もありません。結果として賛成反対が全く相手の論拠を無視してひたすら燃え上がります。
4.なぜ炎上するか 「識者」編
最近も牛乳石鹸や宮城県のコマーシャルが批判され話題になりました。半分は炎上を予期して作ったのでは?と思えるほどスキだらけの内容で、結果としてもう放映はしていないようですが、注目を浴びたことだけは確かです。そしてこうした話題になった問題では必ず「識者」がコメントします。
受け手である一般視聴者が情報をどのように受け止めても普通は問題ありません。何よりその結果は自己責任です。しかし問題なのは「識者」としてコメントや意見表明する人たちまで、こうした情報の吟味をせずに意見をたれ流していることです。
一般人にリテラシーを持てというのは正論ですが、そんな義務はありません。情報リテラシー能力を身に着けたいと思う人だけ身に付ければ良いでしょう。しかし識者が事実誤認やネット情報鵜呑みというのは論外で、「嫌われ者」芸人のような、あえて反発や炎上を呼ぶことでブログアクセスを稼いで現金化したいとかでなければ、そうしたずさんな情報把握力しかない方は識者なの?と思います。
芸能人大御所のような方がうろ覚えで勝手なことを言う番組もありますが、まっとうなマスコミ媒体まで日野氏の問題を体罰是か非かだけで終わっているコメントには違和感しか感じません。
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2017.11.26
2018.03.04
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。