世界的トランぺッターの日野皓正氏の中学生への指導?暴力?が話題になりました。コミュニケーションの視点からはその是非ではなく、昨今の炎上事件と同じくコミュニケーション環境の変化を理解する素材だといえます。しかし問題は「一般人のリテラシーが低い」ことではなく、全く情報理解能力がなく意見発信している「識者」の方ではないでしょうか。
1.伝言ゲーム
子供のころ修学旅行など大人数で集まった時にやったゲームです。何人かで1列にグループを作り、端の人にスタートの情報を与え、それを次々耳打ちで他の人に聞こえないように列の隣の人に伝え、最終的に5~6人で構成する列の最終者が自分の理解した情報を報告します。
最初は「校庭の水たまりにボウフラがわいた」だったものが、伝言で一人づつ伝わる内に、どんどん情報が変容し、最終者の理解は例えば「東京湾にゴジラ出現」のような、原型をとどめないものに変容するのがおもしろいと、小学生のころギャハギャハ楽しんだ覚えがあります。
今コミュニケーション環境で起こっているのはこれに近い情報の変容です。かつてマスコミや有名人以外の一般人には情報発信はできませんでした。それがインターネット登場で環境が革命的に変わり、今ではSNS中心で誰でも世界中に情報発信することができます。
ただし発信しているだけで、その情報の精度などは一切問われないため、多くのデマや誤認、カン違いも真の情報とごっちゃになって世界中に伝わります。情報の真偽を確認できないと、トンデモ情報に振り回される可能性がかつてと比べて決定的に高まりました。実際にマスコミまでがニセ情報に踊らされることは今や珍しくありません。
2.コミュニケーション能力
私はいろいろな大学でキャリア開発の講座を持っていますが、並行して必ずコミュニケーション能力養成講座も行うようにしています。一度キャリアの講座を担当させていただくと、たいていはコミュニケーション講座もやらせてもらえることが多いのですが、キャリアとコミュニケーションは切っても切れない関係にあります。
つまりコミュニケーション能力は「上手にプレゼンする」よりはるかに「上手に情報を得る」ことが大切だからです。私のキャリア講座は就職テクニックだけにとどまらず、大学の正課授業の場合は必ず大学院進学を含めたアカデミックキャリアについても説明します。まして就職希望であれば、正しく企業情を得て、それを活用できずに成功などありません。
キャリアデザインでも就活でも「情報の得方」と「情報の読み方」は絶対に欠かせない能力であり、また確実に実効性が高いため、今年も多くの大学でコミュニケーションの講座を担当させていただいています。そして国立トップ校であれ私大中堅校であれ、まずコミュニケーションを「受け止め方」として習った学生には会ったことがありません。情報の受け方は、講座がなければほとんど未知のまま就職のようなキャリア決定に臨みます。
3.なぜ炎上するか しろうと編
そもそもインターネット上にあるのは情報ではあっても、何の検証もされていないローデータ(生の情報)です。そのデータを読み解いてこそ初めて情報が活用できます。この翻訳や理解こそが真のコミュニケーション能力だといえます。
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2017.11.26
2018.03.04
株式会社RMロンドンパートナーズ 東北大学特任教授/人事コンサルタント
芸能人から政治家まで、話題の謝罪会見のたびにテレビや新聞で、謝罪の専門家と呼ばれコメントしていますが、実はコミュニケーション専門家であり、人と組織の課題に取組むコンサルタントで大学教授です。 謝罪に限らず、企業や団体組織のあらゆる危機管理や危機対応コミュニケーションについて語っていきます。特に最近はハラスメント研修や講演で、民間企業だけでなく巨大官公庁などまで、幅広く呼ばれています。 大学や企業でコミュニケーション、キャリアに関する講演や個人カウンセリングも行っています。