14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第1章|自己〉第1話
もし、あえて比べるとすれば、過去の自分と現在の自分です。
自分の個性が赤色とするなら、「きょうの赤は、きのうの赤よりあざやかだろうか」「今年の赤は去年の赤より深くなっているだろうか」という問いを自分に投げかけてみよう。また、赤といっても、朱色(しゅいろ)もあれば、茜(あかね)色もある、臙脂(えんじ)色もある。自分はどういった赤にしていくかを考えてみるのもいいでしょう。
形にしてもそうです。自分は丸なら丸をきわめてやるという意識が大事です。丸は転(ころ)がすことに向いています。だから自分はどんな転がりを追求していくかを考えるのです。
自分は四角でいくぞと思えば、どんな四角で、どうやってその形を精いっぱい生かしていくかを考える。ある人は箱のような入れ物としてがんばろうと思うかもしれないし、ある人は積み木のような建材として我が道を行こうとするかもしれない。
人の個性に上も下もありません。優も劣もありません。ただ自分が自分らしく、どっしり構えられるかどうかが大事な点です。
学校の成績があまりよくなくて、自分に自信をもてない人がいるかもしれません。しかし、学校の試験は、人間のごく一部の能力だけを取り出して、計算能力が他人と比べて上だとか、運動能力が平均より下だとかをみているだけです。その人のほんとうの個性をみているものではありません。そもそも個性はとても奥深いもので、試験の点数で簡単に表せるものではないのです。
学校の成績に関係なく、あなたという個性は満天に輝く星々の中の一つです。その輝きは他のだれとも違っています。あなたはその個性と死ぬまで付き合っていくことになりますから、ぜひ自分の個性をおおらかに見つめてください。
●「他人の物真似で二流でいるより、自分らしくあることで一流でありたい」。
―――ジュディ・ガーランド(米国女優)
●「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ。平気でへたに、明るく歌を歌ってやればきっとうらやましがられる。……しまいには音痴(おんち」でないものが、頭をさげて音痴同好会に入れてくれといってくるくらい堂々と歌いあげるんだ」。
───岡本太郎(芸術家)
[文:村山 昇/イラスト:サカイシヤスシ]
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。