戦略なき新規参入は怪我の元

画像: Sebastiaan ter Burg

2017.03.22

経営・マネジメント

戦略なき新規参入は怪我の元

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

成長市場ゆえに競合も多い。そんな中に“me, too”と後追い参入してもうまくいくことは少ない。そんな新規事業の立て直しには有効な差別化戦略もしくは思い切ったビジネスモデルの工夫が不可欠だ。

長いこと新規事業のコンサルティングをしていると「元」新規事業の立て直しを頼まれることが時折ある。「新規事業として少し前(1年以内~3年程度)から始めたがうまくいかない。もし本当に見込みがないなら止める覚悟もあるが、できれば立て直したい」といった話であることが多い。

なぜかそのうちの過半数が、客観的には不思議だが、新規事業として最もよくないと言われる“me, too(ならばウチもやりたい)”参入だ。つまり成長市場と見て喜び勇んで参入したが、既に先行企業をはじめとする競合が幾つもおり、しかも特段の差別化もビジネスモデルの工夫もできていないままなのだ。

結局先行企業には追い付かず、後発群の中で赤字を重ねて苦しんでいるという構図だ。まるで好き好んで「レッドオーシャン」市場に飛び込んで怪我をするような真似をしているのだ。

もちろん当事者(時には参入当時の担当責任者がいないこともあるが)には当事者の言い分もある。しかし大半は「残念な」事情でしかない。

経営者の話では「ほぼ横一線の参入だった」ということのはずだったのに、担当者によくよく聞いてみると「企画した時には横一線だったはずが準備に手間取り、参入時には後発組としてダンゴ状態だった」となる。

経営者としては「わが社独自の技術により差別化できると考えた」のだが、それは「ユーザーからはちょっとした違いとしてしか受け取られなかった」(ある担当者の弁)と後になって反省している。もっとシビアに見ると、自社の技術やブランドを過大評価して「わが社が本気になれば何とかなる」と高を括っていたとも言える。

ひどいケースでは、先代経営者の鶴の一声で新規事業として立ち上げた上に、かなりの先行投資をしたので後戻りできず、後発で決定的な差別化ができていないことも分かっていながら半分は玉砕覚悟で参入した、と告白されたこともある。

もちろん、先行企業がいたら新規参入すべきでない、などというつもりはない(そんなことを条件にしたら世の中の新規事業の3/4程度は失格となってしまうだろう)。しかし自社にとって新規事業でも、その市場にはしっかりと先行企業がいる場合、十分練られた戦略が不可欠だ。これは既に参入して苦労している「元」新規事業の立て直しにおいても同様だ。

その先行企業の弱みや、競合により「満たされていないニーズ」をしっかりと研究し、必要とされている困り事解決や不安解消などの核心部分において競合より明らかに優れているようにサービスや製品の提供法を練り上げるしかない(弊社ではこれを「選ばれる理由」磨きという)。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/                  弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/         代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/

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