公平を期した処遇制度が持つ複雑さは、モチベーションの低下を招く。
「同一労働同一賃金」は、新しい実力主義とも言えるだろう。本来、仕事に関係のない要素を、報酬を決める根拠から外すという点は同じ。違うのは、おおまかに言えば、業績(結果)に連動させるのではなく、労働の内容(プロセス)に連動させるという点だ。プロセスは結果ほどには大きく変動しないから、「同一労働同一賃金」は「報酬を比較的安定させることができる実力主義」なのである。今後を考えると、労働者の属性・状況が多様化していくので、処遇の公平を期すための継ぎはぎには早晩、限界がくる。仕事に関係のない要素で報酬を決めるのも、理解されなくなるだろう。そもそも「同一労働同一賃金」は先進諸国の常識で、これにいつまでも抗えるとは思えない。現行が、差別的処遇であると言われて言い返すのが難しいのも事実だ。何が同一労働かという難しい議論は継続して検討する課題とした上で、早めに「同一労働同一賃金」の思想を取り入れた処遇制度を導入するのが得策ではないだろうか。
人事制度
2010.02.15
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2021.05.14
NPO法人・老いの工学研究所 理事長
高齢期の心身の健康や幸福感に関する研究者。暮らす環境や生活スタイルに焦点を当て、単なる体の健康だけでなく、暮らし全体、人生全体という広い視野から、ポジティブになれるたくさんのエビデンスとともに、高齢者にエールを送る講演を行っています。