のんびりとした時間が流れていた大正時代に作られた「時の記念日」は、今も変わらず時間の大切さを考えさせてくれる日です。
今日、6月10日は「時の記念日」です。
1920年(大正9年)に生活改善同盟会が制定しました。制定当時は、『日本国民に「時間をきちんと守り、欧米並みに生活の改善・合理化を図ろう」と呼びかけた』そうですから、のんびりしていた時代であったことが感じられます。日付は、「日本書紀」に671年4月25日(新暦の6月10日)に漏刻(ろうこく)と呼ばれる水時計を新しい台に置き、鐘や鼓で人々に時刻を知らせたと記述されていることにちなんでいます。
「時の記念日」は時間の大切さを考える日です。時間は誰にでも平等に1日24時間与えられていますが、実際には、その感じ方は千差万別です。何があったかによって、同じ一時間が1秒にも、数時間にも感じられるのが人間だからです。時間を大切に、というと「無駄な時間」をなくして効率的にすることだと思いがちですが、本当にそうでしょうか。そうして効率化して空いたはずの時間が、また別の仕事に埋まり、かえって忙しくなることはありませんか。いつも「時間がない」のは、隙間を埋めて余裕をなくしてしまうからではないでしょうか。
『モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子の不思議な物語』という有名な児童文学作品があります。「ネバー・エンディング・ストーリー」の原作者ミヒャエル・エンデの作品で、時間に追われて余裕をなくす社会への警告のような物語です。物語全体は冒険活劇的でもあるのですが、時間をめぐる哲学書のようでもあります。
「時間貯蓄銀行」からやってきた営業マンの「時間を貯めれば命が倍になる」という謳い文句に誘われて、人々は時間を節約しはじめます。「余分な時間」を貯蓄するために、おしゃべりや遊びをやめ、ひたすら仕事を効率化するのですが、やればやるほど時間は少なくなり、人々はぎすぎすと不機嫌になっていきます。節約した時間は手元に残ることなく時間どろぼうに盗まれていて、人々の一日は、一週間は、一年はどんどん短くなります。節約した時間の分だけ、自分のLife=生活や人生、命を削ってしまうのです。
この作品が1973年の刊行にもかかわらず今も読まれ続けていることや、ドイツや日本で特に人気の作品であることに、なんとも感慨深いものがあります。子どもの頃はただ面白くて読んでいたような気がしますが、ぎすぎすした大人になってから読むとその世界観に打ちのめされるようです。時間を大切にするということは、今、本当に大切なことに自分の時間を使うことなのだと教えられた気がしました。今日は「時の記念日」です。どうか、自分の時間=Lifeを大切にしてくださいね。
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