コンセプチュアル思考〈第6回〉 「コンセプト|concept」とは何か

画像: Career Portrait Consulting

2016.04.04

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第6回〉 「コンセプト|concept」とは何か

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ

ところが物事の定義は、実際のところ、「事業とは何か」を一つ取ってみてもわかるように、人によって、また立場・状況によってさまざま出てきます。私たちが自分の頭のなかで物事を定義するとき、出てきた定義がそれこそ概念的なものもあるでしょう。ところが場合によっては、概念的というより、観念的なものが出てくるかもしれません。また、信念的に振れるものもあれば、理念的に寄るものもあるかもしれません。

……さて、ここで出てきた概念と観念、そして理念、信念の違いとは何でしょうか。

その違いを表わしたのが下の図です。1つの軸は、物事のとらえ方が「客観的なとらえ方(皆で共通了解しようとする)」か「主観的なとらえ方(独自の観点でよいとする)」か。もう1つの軸は、とらえた内容が「説明的」か「意志的」か。これによって4つの違いが生まれてきます。



◆コンセプチュアル思考において定義は客観的かつ説明的である必要はない
先の「事業とは何か」についての定義もさまざまな違いがみてとれます。

 「事業とは、モノ・サービスを通じての利益獲得活動である」は、
  客観×説明で〈概念的〉です。

 「事業とは、それにかかわる人びとが可能性を開くチャンスの場である」は、
  少し主観×説明に振れていて〈観念的〉です。

 「事業とは、自分一人ではかなわない夢を成就する仕組みである」は、
  主観と意志の側に寄っていて〈信念的〉です。

 「事業とは、広く雇用を生み出し、カネを循環させる社会的活動である」は、
  客観×意志の色合いが出ている〈理念的〉な定義です。

コンセプチュアル思考において、定義は客観的かつ説明的であらねばならないとは考えません。確かに学者や辞典の編集者であれば、仕事の特性上、客観的な説明に向かわなければなりません。しかし、それ以外のほとんどの場合、人が物事をとらえようとするとき、客観と主観は曖昧に混ざり合ってきます。意のはたらきや情のはたらきによって、そこに何らかの意志という熱量、価値判断による偏りが加わることはふつうです。純粋に知のはたらきだけによって、意志や価値判断的を完全に抜き去り、客観的かつ説明的な定義をすることはむしろ特別で難しいことでしょう。

ビジネスの世界は、サイエンスとアート、そしてフィロソフィーの複雑な混合です。もちろんサイエンスは物事を冷徹に概念的にとらえよと要求してきます。しかし、アートやフィロソフィーはむしろ、概念を超えて、観念を研ぎ澄まし、理念や信念にまで昇華させよと訴えてきます。卓越したビジネスというのは、いつの時代も理念や信念によって成就されてきた事実も見逃せない点です。

次のページ◆「a 事業」を定義するか「the 事業」を定義するか

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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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