概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
例えば、一般的定義の代表として『広辞苑〈第六版〉』の表記はこうです。
〇事業とは「一定の目的と計画とに基づいて経営する経済的活動」である
なるほど、とても客観的な説明となっています。ちなみに、経営学者として著名なピーター・ドラッカーは───
事業とは「市場において知識という資源を経済価値に転換するプロセスである」
(『創造する経営者』ダイヤモンド社より)
と定義しました。彼独自の言い回しによる鋭い説明になっています。では私がひごろ行っている研修・ワークショップで、受講者から出てくる回答例をいくつかあげてみましょう。
〇事業とは「モノ・サービスを通じての利益獲得活動」である
〇事業とは「顧客を獲得しつづける活動」である
〇事業とは「顧客満足の創出」である
〇事業とは「生業や稼業よりは公的で規模の大きい営利活動」
〇事業とは「ヒト・モノ・カネを組み合わせて行う価値創造」である
〇事業とは「それにかかわる人びとが可能性を開くチャンスの場」である
〇事業とは「自分一人ではかなわない夢を成就する仕組み」である
〇事業とは「広く雇用を生み出し、世のカネを循環させる社会的活動」である
〇事業とは「資本家がわるだくみをして自分を成り上がらせるゲーム」である。
出てきた定義のうち、どれが正解かを問うことはコンセプチュアル思考においては的外れです。コンセプトは人それぞれのものであり、そこに唯一絶対の正しいものはないからです。その定義がどれほどのものだったかは、他人が評価するものではなく、「あぁ、あのころの自分のとらえ方は浅かったな」というように、将来の自分が一番明確に評価できるものです。
あえて「よい定義」に言及するとすれば、それは行動と成果を重んじるビジネスの現場においては、「ずどんと腹落ちして、行動するエネルギーが湧いてくる」定義がよい定義です。
◆「概念」は多数で共有するもの/「観念」は個別で取り込んでいるもの
さて、物事が何であるかを言葉で定めることによって、それは概念として人びとの間でやりとりされることになります。概念とは「概(おおむね)の・念(おも)い」と書くように、人びとが「おおかたこう思い浮かべるだろうこと」です。したがって概念は大勢の人間が共通了解することが前提としてあります。つまり、概念は客観的で最大公約数的な説明をめざします。その意味で、辞書や事典は概念集と言ってもいいでしょう。
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。