コンセプチュアル思考〈第4回〉 多から一をつかみ、一を多にひらく

画像: Career Portrait Consulting

2016.03.14

組織・人材

コンセプチュアル思考〈第4回〉 多から一をつかみ、一を多にひらく

村山 昇
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ

私たちは、物事の抽象度を上げておおもとの「一(いち)」を本質としてつかめば、以降、一貫性をもってそれを10通りにも、100種類にも応用展開することができます。逆にいえば、抽象化によって「一」をとらえなければ、いつまでたっても末梢の10通りや100種類に振り回されることになります。1,000パターンにも覚えることが広がったら、もうお手上げでしょう。

「一」をつかんだ者は、1,000のパターンにも対応がきくし、その「一」から発想した1,000のパターンは、抹消にとどまっていたときの1,000パターンとはまったく異なったものになるでしょう。独自性のある強い発想というのは、必ずといっていいほど、その本人が見出した本質の「一」を基にして、それを現実に合うように具体化するというプロセスを経ているものです。

すなわち「多」→「一」→「多」。



多から一をつかみ、一を多にひらくこと。この「π(パイ)の字」の思考プロセスが、コンセプチュアル思考の骨格となる流れです。



◆補足 「成功本」ばかり読んでも成功しない人
書店に行くといわゆる成功本がたくさん並んでいます。そこには仕事・人生で成功するための具体的方法が、著者それぞれの観点から説き明かされています。また本ならずとも、成功事例は、新聞にも雑誌にもテレビにも溢れています。

昨今は、ともかく具体的に、具体事例を、という要求が強まっています。しかし、あまりに具体の次元で埋没してしまうと、抽象の能力を衰えさせることにもつながります。成功本依存の人は、ある種、マニュアルを欲し、マニュアルどおりにやることに安心を得る状態になってしまっています。

成功本・成功事例を具体的に知るということは、「型を覚える」という入り口にしかすぎません。それをそのまま漫然と真似し続けるだけでは、根本の成功はありません。多くの具体事例をいったん抽象して、自分なりに本質や原理をつかんでみる。そのうえで、具体的な行動・方法にひらいていく。この「π(パイ)の字」の思考作業をしないかぎり、成功本は真に身になりません。


上図に示したとおり、

表面的な模倣に終始する「多」→「多」なのか
本質をつかんだ上での「多」→「一(いち)」→「多」なのか

この差は実に大きいものです。


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村山 昇

キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。

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