概念を起こす力・意味を与える力・観をつくる力を養う『コンセプチュアル思考』のウェブ講義シリーズ
作業4はこれまでの作業をふまえて、今後の自分への行動の具体的展開です。抽象化・概念化だけで終えてしまうと、頭の中だけの観念論で閉じてしまいます。思考は具体化され実践されることが重要です。
これら一連の作業が示すように、コンセプチュアル思考は大きく3つの思考の流れによってなされます。すなわち───
1)抽象化(引き抜く)
↓
2)概念化(とらえる)
↓
3)具体化(ひらく)
この思考の流れを私は、その形から「π(パイ)の字思考プロセス」と呼んでいます。
◆漫然と経験を積むだけでは不十分。「観」に変えよ
このコンセプチュアルワークは、いわゆる自分の成長「観」の分厚さを試すものです。観の分厚い人というのは、豊かな経験を持ち、そこから本質的なことを引き抜き、自分の言葉やイメージで独創的に表現ができます。そしてそれをもとに具体的な行動に展開することができます。逆に、もしこのワークをやってみて、成長経験がうまく思い出せない、成長をうまく定義できない、そして行動にも落としづらい、というのであれば、おそらく成長観が弱いのでしょう。
観というのはものごとの見方・とらえ方です。観は知識や技術よりも下層にあって、自分の仕事・キャリアの“あり方”に大きく影響を及ぼします。
漫然と忙しく働いているだけでは、自分の仕事・キャリアが思うように進化/深化していかない状況に早晩突き当たるでしょう。30代以降の仕事・キャリアは、単純に知識や技術面の習得だけでは打開できない“あり方”が問われるフェーズに移ってくるからです。みずからの観を土壌として、方向軸となる志を定め、モチベーションの源泉となる意味を掘り起こし、そのうえで知識・能力を生かしていく。そういう太い構え方が求められるようになります。仕事には仕事観が、キャリアにはキャリア観が、事業には事業観が必要になります。組織観、人財観しかりです。
さて、冒頭に掲げた問い───「成長上手な人」と「成長ベタな人」との差はどこにあるか。それは結局、成長観をどれだけ堅固に醸成しているかどうかの差であると思います。
確かにどんな出来事でもそれを試練として乗り越えれば成長は得られます。が、漫然とそれをくぐり抜けているだけでは“モグラたたき”がうまくなるだけの上達です。それは「成長ベタな人」のすることです。「成長上手の人」は、観のもとにその試練に意味づけをしたり、あるいは成長機会を意図的につくり出したりして進んでいくことができます。
キャリア・人生においては、どのみち試練・苦労は絶えません。同じ苦労をして成長をしていくなら、観をしっかりと醸成させて、よりよい成長を引き寄せたいものです。しかし、観もまた漫然と放置しておくだけでは堅固に醸成されないものです。観をつくるために、「抽象化→概念化→具体化」というプロセスで物事をとらえていく。そうしたコンセプチュアルに思考する訓練を日ごろから意図的にやっていくことが大事です。観はそうした思考習慣の堆積物だと言っていいものですから。
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ビジネスパーソンのための新・思考リテラシー『コンセプチュアル思考』
2016.02.05
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。