面接の質を高めるために人事担当者が取り組むべきこととは? 連載「ダメ面接官の10の習慣」では、ダメな面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウをお伝えします。第3回のテーマは「ダメ面接官は賢そうに振る舞う」です。
日本には、「あうんの呼吸」「以心伝心」「一を聞いて十を知る」「おもんぱかる」といった言葉があるように、相手がすべてを言わなくても、内容を先読みし把握しようとする文化があります。これはビジネスシーンでも見られ、日本企業で働く有能な人であれば、かなり鍛えられている能力でしょう。職場で一から十までいちいち聞かなければ相手の言おうとしていることを理解できないようでは困ります。そのため、面接の場でもデキる社員は「つい」候補者をおもんぱかり、じゅうぶんに話をさせず、理解したつもりになるのです。おもんぱかることがいけないわけではありません。候補者に必要なことをきちんと話してもらわないことがいけないのです。
デキる面接官ほど知らないふりをして聞く
候補者にきちんと話してもらうため、面接官は自分がどれだけ熟知している内容であっても、まるでその道の素人であるかのように話を聞く姿勢をとりましょう。私はこれまで、新卒と中途を合わせて約2万人と面接し、同じような話を何度も聞いてきました。しかし、どんな話でも初めて聞いたような姿勢を貫くことができます。
たとえば、ラクロスの話。私はこれまでにラクロス部出身の学生数百人と面接してきたので、どのようなスポーツなのかは百も承知ですが、今後もラクロス部出身の候補者に対しては「へえ、ラクロスってどんなスポーツなんですか?」と聞きます。ラクロスについて知っているからといって、候補者が説明する機会を省略するのは良いことではありません。説明させることで、候補者がラクロスという競技をどのように定義しているのかを知ることができます。そして、どのように説明するかによって、候補者のラクロスに取り組む姿勢がわかり、その姿勢を通じて志向や価値観も見えてきます。単にルールを説明する人、大学から始めた人でも優勝が狙えるカレッジスポーツと言う人、激しくぶつかりあう格闘技的要素を持ったスポーツだと言う人など、さまざまな表現があり、それらに候補者のパーソナリティーが表れます。ですから、候補者の話す内容をどれだけ知っていたとしても、「知らないふり」をして聞くことが大切なのです。
「バカ」にされてもよい。「リスペクト」してあげよう
私は面接官指導をする際、よく「バカになったつもりで聞け」と言っています。実はこれは、相手の志望度を高める効果も期待できる、一石二鳥の手法です。なぜならたいていの場合、その会社への志望度は、候補者が「面接官が自分を認めてくれた」と思ったときに高まるからです。反対に、面接官に論破され「参りました……」と降参させられた候補者が内定を受諾してくれた、というような事例はあまり聞きません。
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