突然ですが、問題です。持ち時間30秒で答えてください。 あなたの目の前で、お腹を押さえた子供が苦しそうな表情をしています そこへ、会社の社長から携帯に電話が入りました。「緊急事態だ、早く帰社してくれ」、と さあ、あなたなは子供を放っておいて帰社しますか?それとも社長の命令を無視しますか?
というジレンマに、もっと大きいスケールで直面したのが、福島原発の吉田所長です。
目の前には冷却機能を失った原発、ところが本社からは「海水の注水を中断セヨ」との命令。指示を出しているのはおそらくは事故対策の指揮を執っていた小森常務。命令をきかなければ処分が待ってるのは間違いありません。
いわば、「前門の虎、後門の狼」ならぬ「前門のメルトダウン、後門のサラリーマン人生」という感じでしょうか。
実際のところは、吉田所長は本社の命令を無視して注水を続け、その結果処分が下されました。これをめぐっては
・本社からの命令に従わないことへの処分は当然だ
という「処分肯定派」と、
・正しい判断をした人の行為をとがめるのはおかしい
という「処分否定派」による賛否両論はいまだに渦巻いています。
そして、この問題の難しさは、一人吉田所長のみならず、後に続く人の行動へ大きなインパクトを持つところにあります。
組織の統制を優先させれば社員は萎縮して主体性になにかをやることはなくなって、いわゆる「指示待ち」化してしまいます。
かといって勝手な行動を認めてしまうと、ずるずると規律が失われていって、組織としての効率性・安全性に大きな問題を抱えそう。
さすがにメルトダウンほどの大事件はないでしょうが、似たような状況で現場の判断を優先させるのか、それとも上司の命令に従うべきかで迷ったことがあるビジネスパーソンは多いでしょう。
こんな古くて新しい問題に新たな解を示してくれるのが、筆者のビジネススクールの恩師、スマントラ・ゴシャール教授です。
名著「個を活かす企業」では、個々の社員の起業家精神を発揮せしめながら、同時に組織としての統制を揺るがせない経営が可能なことを証明しています。
その際にキーになるのが「自己規律」。ルールよりも、社員の内発的な動機に基づく自らの行動の掣肘こそが、一見相反する2者を統合するカギである、とスマントラ先生は主張しているのです。
そのためにも、
・明確な業績基準を設けて、
・情報の公開を義務づける
・しかも、同僚との比較を行う
という、自己規律を醸成するプラットフォームを整備するのがトップマネジメントの役割である、とつづきますね。
思えば、スマントラ先生は、モノゴトをけっして「あっちか、こっちか」の二律背反、もしくは「ORのフレーム」では捉えていなかったような気がします。
むしろ、「起業家精神も自己規律も」、はたまた「思考も行動も」、「感情も論理も」という、「ANDのフレーム」を持っていたことが、彼をして世界的なマネジメント研究の権威にしていたのでしょう。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
社内政治に絶対負けない法
2011.06.10
2010.02.03
2010.01.21
2009.11.13
2009.10.07
2009.09.04
2009.08.27