米『TIME』誌が毎年恒例の「今年の人」を発表した。2010年のチョイスは、フェイスブックの若き(26歳!)創設者兼CEO、マーク・ザッカーバーグ。その選択は、ソーシャル時代の本格化を示唆するものと見た。
最近、調査報道で有名なアメリカのニュース番組『60ミニッツ』でもフェイスブックが特集され、マーク・ザッカーバーグがインタビューされていたのですが、その中で、彼が口にした言葉にはっとさせられました。
「フェイスブックの目的は、インターネットをまるごと支配し、所有することですか?」
というインタビュワーの質問に直接的には答えず、彼が言ったのは次のようなことでした。
「写真でも、音楽でも・・・あらゆるものを、友人や家族など、自分にとって大切な人たちと『一緒に使う』ことができたら、誰でもそうしたいと思うのが当然だ」
日増しに「ソーシャル化」する生活者の欲求に応えるソーシャル・プラットフォームをフェイスブックは構築しているだけだ。その結果として、5億人の支持を得ているのだ・・・。
私には、彼がそう主張しているように聞こえました。
昨今問題視されている個人情報の蓄積や売買の問題はさておき、「フェイスブックは、ソーシャル化する生活者の欲求に応えているからこそ、生活者の支持を得て、より一層の繁栄を続けているのだ」というザッカーバーグの主張は、私には妥当なもののように思えます。裏返していえば、生活者の「ソーシャルな欲求」、市場のソーシャル化に応えられない企業は衰え、去り行くのみ・・・ということもできるでしょう。
2010年は、「ソーシャル時代元年」とでも呼ぶべき年でした。フェイスブックなど、ウェブ上のソーシャル・テクノロジーの影響で、生活者の情報伝播力、発言力、影響力、そして、「組織力」が目まぐるしく増大した結果、生活のあらゆる側面で「ソーシャル化」という現象が起こってきました。
私は、2011年には、この「ソーシャル化」がますます加速するのではないかと思っています。その結果、流通業をはじめ企業は、「ソーシャル化」に伴う生活者の行動変化や要望に応えざるを得なくなると思います。
でも、誰もが、「フェイスブック」にならなくてはならない、ということではありません。ソーシャル・テクノロジーを導入して・・・というだけの問題ではなくて、ソーシャル時代にふさわしい企業のあり方、考え方というのが、今、問われているということだと思うのです。「ソーシャル」といわれると、すぐにテクノロジーの話だと思って尻込みしてしまう流通業の人たちは、特にこれを自覚する必要があると思います。
ソーシャル時代にふさわしい考え方とはどういう考え方かというと、例えば、「組織化された顧客」、つまり生活者の力の膨大さを認識することだと思います。「顧客エクスペリエンス」とはもはや、企業の力だけで形づくるものではありません。
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市場変革
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ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。