ニューヨーク大学マーケティング学教授スコット・ギャロウェイ氏発の衝撃の予言、「2025年までに、アマゾンがアメリカで最も急速に成長する『医療サービス会社』になる」。アメリカで最も問題を抱え、最も「革新」が切望される膨大な市場といえば「ヘルスケア」。100兆円を超えるその時価総額を倍にすることを狙うアマゾンの、次なるターゲットは「医療サービス」だ!
「コロナ絡み」のプライム会員向けサービスの拡大?
アマゾンによるホール・フーズ・マーケットの買収を予測したことで一躍有名になったニューヨーク大学マーケティング学教授のスコット・ギャロウェイ氏。日本でも『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』などで知られていると思います。毎週のように刺激的な予言や提言を発信してくれるギャロウェイ氏に私も常に注目していますが、同氏の最新の予言は私を含めアメリカの産業界を覚醒させるものでした。
『近い将来、アマゾンがプライム会員を対象にコロナウイルスの検査キットを提供するだろう』というのです。
アマゾンといえば、倉庫作業員や宅配ドライバーを含む全従業員を対象にコロナウイルス検査を行う目的で、現在、独自の検査ラボおよび検査キットの開発を急ピッチで進めています。
当初の目的は「自社従業員対象の検査執行」に限定しているにしても、信頼性の高い検査キットが開発できたあかつきには、それを社外にも提供しない手はない・・・というのは、極めてロジカルな推論だと思います。
ヘルスケア市場に伸びるアマゾンの触手
日本とは異なり、アメリカには「国民皆保険制度」はなく、多くの場合、医療保険は企業が従業員に対して福利厚生の一貫として提供するもの。個人で保険を購入する人もいますが、月平均600ドル(個人)~1,600ドル(家族)と大変高額なため、保険を持たない人も3,000万人近くいます。年々増加の一途をたどる医療コスト、そして、それに伴う企業(雇用主)の負担の深刻化が国を挙げての問題になっています。
問題のあるところには「好機」も同様に多く潜んでいることに目をつけ、近年、アマゾンは、「ヘルスケア市場」への参入を視野に様々な取り組みを次々と展開してきました。2018年には、「米雇用主の医療コスト負担の削減とより優れた医療サービスの提供」という壮大なビジョンを掲げ、バークシャー・ハサウェイ、JPモーガン・チェイスと合弁会社を立ち上げました。また、AIアシスタントのAlexa(アレクサ)は、2019年以来、ボストン・チルドレンズ・ホスピタルやエイトリアム・ヘルスなどアメリカの有名医療機関との提携により医療データの交換に活用されています。さらに、流通の分野では、法人向けマーケットプレイスであるアマゾン・ビジネスを通じて医療サプライの販売に注力するだけでなく、2018年にはネット・ファーマシーのピルパック(PillPack)社を買収し、処方薬その他の医薬品を生活者に直接販売・宅配する事業にも意欲を示しています。
市場変革
2013.01.09
2010.12.17
2010.08.25
2009.11.18
2009.10.17
2020.05.15
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。