ニューヨーク大学マーケティング学教授スコット・ギャロウェイ氏発の衝撃の予言、「2025年までに、アマゾンがアメリカで最も急速に成長する『医療サービス会社』になる」。アメリカで最も問題を抱え、最も「革新」が切望される膨大な市場といえば「ヘルスケア」。100兆円を超えるその時価総額を倍にすることを狙うアマゾンの、次なるターゲットは「医療サービス」だ!
上記は「ヘルスケア」という膨大な市場に対するアマゾンのアプローチの「氷山の一角」であり、クラウド・コンピューティング事業であるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)を活用している医療機関の数を考慮に入れると、アメリカのヘルスケア業界におけるアマゾンのリーチは既にかなりのものだと推察できるのです。
「5年間に株価を倍に」を実現する巨大市場
上場企業としては、常に株価を上げ続けることが要求されます。現在、アマゾンの時価総額は約1.2兆ドル(120兆円)。もし、アマゾンが向こう5年間に株価を倍にしようと目論むのであれば、年率1,000億ドル(10兆円)から1,500億ドル(15兆円)の増加をめどに売上を拡大していくことが要求されます。これを実現する唯一の手段は、非効率極まりない巨大な市場に進出し、サプライ・チェーンの川上から川下まで一貫してメリットを提供するイノベーションを起こすことですが、その恰好のターゲットが「ヘルスケア市場」であるということなのです。
不謹慎な言い方かもしれませんが、その足掛かりとしてコロナ・クライシスはまたとない好機をもたらしました。コロナ感染症拡大抑止のための「ロックダウン(外出禁止令)」がアメリカ全土に広がるにつれて、アマゾンは自社従業員を対象に昨年9月に立ち上げたバーチャル・ケア(オンライン診療)サービスをさらに充実・強化しています。自社従業員を対象に既に運営しているこの「バーチャル・ケア・サービス」や、先述のコロナウイルス検査キット/サービスを、二次的な展開として社外サービスとして拡大することは、アマゾンにとって最もロジカルかつ経済的にも理にかなったステップであるといえます。
コロナの時代を切り拓く
以上が、ギャロウェイ教授が「2025年には、アマゾンは世界で最も急速に成長しているヘルスケア・カンパニーになっている」と予言する所以です。コロナの影響は荒波となってあらゆるセクターに波及し、世界中の国、市場、業界、企業、人にインパクトをもたらしています。その「インパクト」をポジティブなものにするか、あるいはネガティブなものにするかは当事者次第であるといえるでしょう。たしかに、コロナで失われるもの・ダメージを受けるものは確実にあります。しかし、そういった危機の只中にあるからこそ、「人の生活を守る・支援する」ことにひたむきなフォーカスをおき、ソリューションを提供していく企業こそが、新しい時代を切り開く存在になれるのではないでしょうか。
市場変革
2013.01.09
2010.12.17
2010.08.25
2009.11.18
2009.10.17
2020.05.15
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。