目新しい話ではないが、Dellの「信じる道をいこう」というキャンペーン、上手くやっている。今回は、このDellのキャンペーンを題材に、貴社が無料で広告宣伝してもらった上で、対価がもらえる機会があることを紹介する。
広告宣伝で最も効果の大きいのは口コミ。お客様が自社の商品・サービスを宣伝してくれること。特に、広告宣伝の機会が限られているBtoBなら尚更。
Dellの「信じる道をいこう」キャンペーンでは、自社のお客様のベンチャー企業の社長何人かに登場してもらって、シリーズで自社HPや新聞の全面広告、電車の吊り広告などを展開している。
こうしたお客様から全面協力を得た広告宣伝は、口コミとほぼ等しい効果を発揮する。このキャンペーンでも見た目から広告主であるDellが仕掛けていることは明らかだが、先方の全面的な協力があることが分かる内容となっているので、お客様からの口コミと同等の効果を得られるものになっている。
こうした広告を実施する時の制作費は、著名なタレント、セレブリティを使うのに比べ、少なくて済む。広告対象とまったく関係のないタレントやセレブリティがにっこり微笑んで「これがいいですよ」と勧めるよりも、実際のお客様からのお勧めの方が余程説得力がある。
問題は、日本企業の買い手企業は、どんなに売り手の商品・サービスに満足していたとしても、こうした広告宣伝への協力は嫌がる傾向にあることだ。まだまだ、こうした手法が日本に浸透しておらず、そうした要請を受けることに買い手企業が慣れていないということもあるだろう。大企業では、実際のエンドユーザだけでなく、広報など貴社の商品・サービスの恩恵を受けていない部門を通さなければならないということも買い手企業がこうした協力を嫌がる理由の一つだ。
本来は、協力をお願いされる買い手企業にしてもお金を掛けずに露出が増えるので、悪い話ではない。加えて、こうした広告に協力を頂く際には、製品・サービスを大幅に値引きしたり、値引きどころか、売り手企業が謝礼を支払うことも少なくない。こうした実際のキャッシュメリットを提供しても、コストセンターである広報、マーケティング部門では、協力先が後で問題を起こしたら大変と、なかなか首を縦に振ってくれない。それより、自分で大金を払って広告を出した方が良いという判断をする。
そうした点では、Dellがベンチャー企業、成長企業の経営者に協力先を絞ったのはうまい戦略だ。ベンチャー企業、成長企業は、自身が、広告宣伝媒体での露出を得ることが難しいのを肌で感じている。また、キャッシュにシビアなので、宣伝協力することで自社のキャッシュフローが改善できるならと協力に乗ってくれやすい。上の人間になればなるほど、こうした感覚が鋭いので、これらの層に話を持っていけば、首を縦に振ってくれやすい。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます