調達とは、貴社が経営における自由を勝ち取るための闘争である。 そうした調達の本質を示す、材料の調達をめぐる闘いを紹介する。
神戸製鋼はベトナムに建設する独自設備で、現地の不純物の多い鉄鋼石からアイアンナゲットと呼ばれる鉄鋼原料を製造、日本に持ち込み、高炉で溶かして鉄鋼にする。神戸製鋼は当面、自社の粗鋼生産の1割弱をアイアンナゲットから行う。このアイアンナゲットを用いると、高品位の鉄鋼石を使う場合と比べて、生産コストを2~5割安くできるという。今後は同様の設備をインドやロシア、豪州などにも建て、一部を日本に持ち込む。
新日鉄は強度が劣る微粉炭を利用しやすくする最新設備を600億円を投じて拡充する。この設備により微粉炭の高強度コークスの原料としての利用比率を現在の2割から5割超に引き上げることが可能になる。(出所:2010年9月10日 日本経済新聞9面)
企業間取引においては、人が思っているほど買い手の立場は強くない。個人の買い物と異なり、企業がモノを買おうとアクションを起こす時はそれを必要としている時だ。特に、資源などの材料や部品は、それを入手できなければ工場のラインが止まってしまう。ラインが止まってしまうと、それに関わる人員、他の材料、部品の在庫が遊んでしまう。お客様に既に納期をコミットしていれば、納期遅延のペナルティが発生してしまうこともある。
一方、売り手の方はまだ営業段階では何の約束もしておらず、その会社にモノが売れなくてもそのアイテムの在庫が多少膨らむだけ、営業パーソンのボーナスが一部カットされるだけ。買い手企業はかように実際には非常に弱い立場にある。
原材料、部品の供給をサプライヤに握られてしまっては事業運営、経営がままならない。よく言われる「サプライヤとのwin-winの信頼関係を築くのがベスト」というのは、表現としては美しいが、サプライヤに経営をコントロールされる心配のない安全な地位を確保している極限られたシチュエーションのみに通じる綺麗ごとに過ぎない。
そうした立場にない買い手企業がしなければならないことは、調達における選択肢を増やすこと、経営における自由度を高めることである。そうすることは、供給不足といった不測の事態への対応だけでなく、日々の取引における交渉の立場を強めることにもなる。自分の今日の行動すらままならないのに、サプライヤと協調などしていられるだろうか?自分をこうした立場に置くことができて初めて「サプライヤとのwin-winの関係」を考えることができるのである。
調達の本質は、こうした調達における選択肢を増やすことにより経営の意思決定の自由度を高めること、つまり、
経営における自由を勝ち取るための闘争
なのである。中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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週刊 戦略調達
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます